新入社員へ贈りたい3つの言葉2019年編③:「社会人は結果がすべて」はウソ

今日も「新入社員」に覚えておいてほしい言葉をお贈りする。

今日のテーマはこちら。

③:「社会人は結果がすべて」はウソ

「ウチで仕事ができないのならどこに行っても通用しない」と同じく、新入社員がよく上司から言われる言葉が社会人は結果がすべて」である。

これも限りなくウソだと言える。

・「結果がすべて」とはどういう意味か?

そもそも「結果がすべて」とはどういう意味なのだろうか?

手っ取り早く言えば、どんなに一生懸命頑張っても、結果を出せなければ、お金を貰うことができないことだと私は思う。

この社会には、この理屈が当てはまるケースも存在すると思う。

たとえば、自営業者やフリーランスの人である。

彼らは、クライアントに気に入られたり、毎日、徹夜して一生懸命働いても、成果を出せなければ、一円も受け取ることができない。

もう一つは転職の時である。

前の職場でどんなに一生懸命頑張っても、数字に表れる業績がなければ、その頑張りだけで「あなたを採用します!!」と言われることはない。

このようなケースでは「結果がすべて」が当てはまると思う。

ただ、新入社員が職場で(偉そうな)先輩に言われる「社会人は結果がすべて」という言葉はこのようなケースを含んでいるとは思えない。

なぜなら、(私がこの考えに賛同するかは別にして)「社会人」という言葉は多くの場合「会社員(サラリーマン)」とイコールで結ばれており、自営業者、フリーランス、転職活動者はこの言葉に含まれていないからである。

会社員が結果を出せない場合はどうなるのだろうか?

罰として給料を減らされる?

「明日から来なくていいよ」と言われ、解雇される?

「社会人は結果がすべて」の理屈に沿えばこうなるだろう。

結果を出せない人間にはお金を払うことはできないのだから。

しかし、今の日本企業ではどちらも起こりそうにない。

せいぜい、上司から嫌味を言われるか、最悪でも不人気の場所に左遷になるくらいである。

私の意見を聞いたら、殴りかかりそうな勢いで「お前は会社をナメてるのか!?」と憤る人もいるだろうが、私の経験では、口で厳しい(偉そうな)ことを言っている人ほど、本人は自覚せずに「一生懸命働けば、最後は会社が守ってくれる」と思っている傾向にある

・就職希望の高校生にバックレられる

私がこのように思うきっかけになったのは、5年以上前に働いていた職場で、高校生のアルバイトにバックレられたことから始まる。

彼は高校卒業後の就職希望者でもあり、職場見学も兼ねてアルバイトとして働いていた。(もちろん、給料は支払われていた)

その彼が仕事をバックレて、卒業後の就職も辞退することになったのである。

しかも原因は私らしい。

断っておくが、私は彼をいじめて退職に追い込んだわけではない。

彼がバックレた原因は、私が彼に労働条件をあまりにも正直に話してしまったからである。

そもそも、労働条件の話は面接の時にするものだと思うのだが、彼が言うにはそのような話は一切聞かされていなかったらしい。

だから、私が一緒に仕事をしている時に、その話をすることになった。

その会社の勤務条件をおおまかにまとめると

・土日祝日を含む週5日勤務で、有給休暇を取得するまでは、社長がランダムで週2日の休日を決める。

・当たり前のことだが、休日は本当に「仕事をしなくていい日」という意味で、その日は無給でボランティアとして働いたり、勉強会に参加させられたりすることはない。

・勤務時間は830分から1730分まで、残業時間は今の状況で仕事が続けば、月に10時間もない。

・給料は月に20万くらいで、額面と手取りの差額がボーナスとして支給される。

・年収は約240万円。当時、私が住んでいた地域の初任給としては妥当な金額だと思われる。

ここまでの話は彼も笑顔で聞いていた。

ところが、次の言葉で、彼の表情が変わった。

早川:「ただし、この仕事を10年も20年も続けたとしても、自動的に年収が500万、700万と上がっていくような会社じゃないから、『結婚して家を買おう!!』とか『子どもを中学から私立の学校に入れよう!!』と思ったら、転職しないといけないんじゃないかなあ… 」

就職希望者:「え!? そうなんですか!?」

早川:「そうだよ。よく『日本の会社は働いた年数に応じて給料が上がるものだ』と言われるけど、あれは長く働いたご褒美として給料が上がるわけではなく、長く働いたら(ほぼ自動的に)課長、部長と出世して、その立場に高い給料を払うわけだけど、この会社にそんなポストはないから」

就職希望者:「・・・」

早川:「まあ、頑張ればココの工場長くらいにはなれるかもしれないけど、今の工場長が(当時)28歳で君と10歳しか違わないから、あの人が65歳までココにいたら、君は55歳になる。その時になるまで昇給を待つよりも、自分が転職した方が、手っ取り早いと思わない? 」

就職希望者:「ということは、大体、何年くらいで転職を考えたらいいのでしょうか? 」

早川:「まあ、3年くらいかなあ…」

就職希望者:「でも、そんなにすぐに辞めてしまったら、退職金とか出ないんじゃないんですか!? 」

早川:3年で辞めるとか関係なしに、もともと退職金なんてないよ」

結局、これが彼と交わした最後の会話になった。

翌日、高校の進路担当者から電話があって「本人の就労意思に迷いがある」との連絡があり、その数日後、学校を通して就職辞退の返事があった。

工場長によると、彼が就職を辞退した一番の理由は私が話した「労働条件」だった。

つまり、彼が辞退する引き金を引いたのは私であるということになり、工場長から大目玉を喰らうことになった。

私は今でも自分が間違ったことをしたとは思っていないし、当時の勤務先が内定を辞退するほどのブラック企業だとも思っていない。

彼は公務員のような安定した職場に就職したかったが、当時の勤務先はそのような労働環境を提供できなかったから、彼は就職しなかった。

それだけのことである。

・強面のおじさんたちの意外な反応

社会の厳しさ」という言葉がある。

正直言って、私はこの言葉の意味はよくわからないのだが、今回のケースのように、「新卒で正社員になれても、定年まで会社に面倒を見てもらえるとは限らず、その後の人生は会社に頼るのではなく、自分の力で切り開いていくしない」ということを伝えたい時に使われるべきではないかと思う。

のだが・・・

私が彼にバックレられた時のことを話すと、なぜか、最も彼を擁護していたのは

「全く、近頃の若い者は『草食系』だとか言われて、覇気や冒険心が無く、大企業や公務員のような他人が敷いたレールの上しか走りたがらない。それに少しでも嫌なことがあると『ブラック企業』だと言って騒ぎ出す。プンプン。俺たちの若い頃は~」

と言ってそうな強面のおじさんたちだった。

「彼の選択は正しい。そんな会社には行かない方がいいよ」

「年功序列も退職金も無いなんて、本当に正社員として雇う気はあるの?」

「これが最近よく聞く『ブラック企業』ってヤツなのか」

彼らの反応を聞くたびに私は拍子抜けしそうになる。

なぜ、「近頃の若い者はすぐに『ブラック!! ブラック!!』と言って甘えているから嫌いだ!!」とか言って、社会(会社)の厳しさを主張している人たちが「正社員として就職すれば、自動的に定年まで会社が面倒を見てくれる」と思っているのだろうか?

正社員として入社したら定年まで面倒見てもらえることが当たり前だと思っている人たちの言う「社会の厳しさ」って一体、何よ!?

繰り返しになるが、就職希望者にバックレられた私の勤務先は時間外労働が月に100時間あるような会社ではない。休日も毎週2日はある。

そのような恵まれた労働環境でも「企業は『年功序列や終身雇用、退職金』のような(個人の業績とは無関係な)高福祉を保証することが当然であり、それがなければ、就職先としてお断りすべきだ」と彼らは言っているのである。

「頑張ったからOK」は学生までではなかったのか!?

「社会の厳しさ」だとか「社会人は結果がすべて」と威勢のいいことを言っている人にとっては、たとえ、仕事ができなくても、頑張って出社して、上司に罵倒され続けられることが、社会人としての責任なのか?

企業とは、どんなに仕事ができない従業員に対しても、辞めずに勤め続ければ、最終的に年功序列や退職金などの高福祉を保障してくれる暖かい父親のような存在なのか?

私には彼らの考えは分からないが、

「社会人は結果がすべて」とエラそうな顔で説教している人たちが本気でそう思っているのかは、かなり疑わしい。

中小企業に就職すると、彼らが望むような(結果を出せない人でも恩恵を受けられる)高福祉は期待できないかもしれないが、よほど勤務態度に問題のある人でなければ、「あんた、仕事ができないから、明日から来なくていいよ」と言われて突然切り捨てられることはないと思う。

経営者も人間なので、真面目に働く人はできるだけ雇い続けたいと思うものである。

だから、「社会人は結果がすべてだから、(無理してでも)何か大きな成果を出せなければ!!」と自分を追い詰めるのではなく、真面目にコツコツと働くことの方が大事なのである。

実際に(偉そうな顔で)「社会人は結果がすべてだ!!」と言っている人も大半は年功序列や終身雇用に守ってもらおうと考えている甘ちゃんたちなのだから。

・まとめ

今日まで3回に分けて、新入社員に覚えておいてほしい言葉をお伝えしてきた。

この言葉を知ったから何か変わるわけではないが、仕事に悩むことがあったら、この言葉を思い出してほしい。

最後にもう一度、おさらいする。

この言葉を常に頭に入れて明日からも頑張ってほしい。

スポンサーリンク