オンラインの関係であっても無理に長く連絡は続けなくてもいい

先日、20歳のフィリピン人男性とこんなやり取りがあった。

最初に、職業、居住地などの簡単な自己紹介をした私は「何の話から始めたいですか?」と尋ねた。

すると彼はこのように答えた。

フィリピン人男性:「何を話したらいいのか分からない。あなたはこんな時どんな話をしますか?」

自分から連絡してきてそれはないでしょう…

私はこれまで、「あなたと話をしたい!!」と言いながら、自分ではテーマの一つも考えずに、相手に一方的に話をリードしてもらいたいと考え、そのわがままを受け入れてもらえなければすぐに逆ギレする甘ったれた人を何度も見てきた

彼もその類の人物なのだろうか?

と思っていたが、先ほどの返事はコミュニケーションの放棄ではなく、大真面目な質問だった。

彼はこれまでも「外国の人と交流がしたい」と思い、1年近くペンパルサイトを利用していたが、自己紹介の後は何を話したらいいのか分からず、自分からその先へ話を進めることができなかったそうである。

そして、運よく相手が話を広げてくれても、1ヶ月も経てば話のネタが尽きてしまうため、なかなか長期的な関係を築くことができなかった。

彼はそんな自分を変えたいと思い、先ほどの質問をしてきた。

これまでブログでも何度か説明した通り、外国で暮らしている人と話をするためには、ある程度しっかりした言葉(長い文章)で説明することが必要である。

しかし、それが出来ない人も多い。

その原因はお互いに全く別の生活を送っている者同士が、突然出会っても、漠然とし過ぎて、自分の生活を客観的に説明することができないからである。

・「あらしのよる」に作戦

以前書いたことだが、それを解消するためにはお互いに同じ場所にいるつもりで会話することが手っ取り早い。

実際に私はカナダのバックパッカー宿に宿泊した時に、数人の外国人旅行者と話をしたのだが、翻訳ソフトを使うことが出来ない対面の会話でも、ネットで出会った時よりも次から次へと話題が見つかるのである。

あなたは「あらしのよるに」という童話を知っているだろうか?

土砂降りの夜、ヤギが雨宿りをするために山小屋を立ち寄った。

しばらくすると、そこに狼も雨宿りのためにやって来た。

本来であれば、喰う者と喰われる者という立場であり、絶対に相容れない者同士であるが、その山小屋は照明がなく、お互いに風邪気味で鼻も利かないため、相手の正体に気付かず、世間話を進める。

次第に二匹は意気投合して、立場を超えた友情が成立するという話である。

この話のように、普段は全く別の生活を送っているもの同士でも、日常を離れて共通の場所にいれば自ずと自己開示や、相手の話への共感ができるようになる。

自然に会話を広げたいのなら、このように、登山中に迷子になって、雨宿りをするために立ち寄った山小屋で、誰かと出会った時にどんな会話をするかを考えてみればいいのである。

・レギュラーとゲスト

さて、彼のもう一つの悩みである「どうやったら長期的な関係が築けるか?」であるが、私なりの結論を言わせてもらえば、それは「連絡の頻度を下げる」ことではないかと思う。

ちょうど1ヶ月前に書いたことだが、私には3年近く連絡を取り合っている人がいる。

彼らとは1ヶ月に12通のメールでお互いの近況を報告するか、業務連絡的な質問(私の場合は、このブログのネタで使うような、その国の生活についての話)をする時だけである。

どちらかがメッセージを送っても、その返事は1ヶ月後ということも珍しくない。

これは手紙で文通する時の関係に似ている。

一方で、短期間で何通もやり取りする人とは長く関係が続かないものである。

決して、関係が悪化するわけでなく、出会った当初は盛り上がったものの、次第に熱が冷めていくことが多い。

これは旅先で出会って意気投合しても、そこから離れてしまったら、あまり相手への感心が無くなってしまうことと似ている。

旅の出会いは一期一会というが、まさにそんな感じである。

実際に私も、先ほど紹介したカナダで出会った旅行者や、フィリピンに留学した時に出会った日本人仲間と連絡先の交換をしたのだが、その後、連絡をしたことはほとんどない。

物語に例えると、文通型のやり取りを行う人は「レギュラー」で、一期一会型の相手は「ゲスト」ということになる。

フィリピンからメールを送ってくれた彼に限らず、「付き合う以上はやっぱり長期的な関係(レギュラー)がベスト」だと考えている人が多い。

そうはいっても、私はゲストのような関係で終わることが悪いとは思わない。

そもそも、ゲストの定義であるが、これは案外判断が難しい。

リアルタイムで何十通もメールを交わした後、その日限りでやり取りを終了することは疑う余地なく「ゲスト」だと言える。

ただ、期間こそ2,3ヶ月に及ぶものの、よくよく内容を読み返してみると、対面であれば1日で終えるようなやり取りしか行っていない場合も多い。

この場合も「ゲスト」とみなした方が妥当である。

そう考えると、これまで数百の人々と出会ってきたが、95%以上はゲストの相手だった。

私はそれでも彼らとのやり取りは、「刹那の楽しみ」に過ぎず、意味がなかったとは思っていない。

数ヶ月に渡って、

   How are you?

「I’m fine, thank you.」

という意味のないやり取りを続けるよりも、期間は短くとも、内容のある話が出来る方がはるかに有意義だし、何年経っても記憶に残っていることも多い。

それは先ほど触れた、実際に海外で出会った人たちも同じである。

というわけで、「何が何でも長期的な関係でなければ嫌だ!!」と関係の長さにこだわらずに「まずは今日1日だけでもいいから」と気楽なやり取りから話をすることをおすすめする。

・おまけ・・・というかオチ

このような話を彼に伝えたつもりだったが、彼からこんな返事が送られてきた。

フィリピン人男性:「そうだったのか。ありがとう。僕はそろそろ帰ります。あなたと出会えて本当に良かった。今日のことは絶対に忘れません」

え!?

私が言いたいことが上手く伝わらなかったのか、どうやら彼は私との関係はその日限りで終えるつもりらしい。(単純に私が嫌われただけである可能性もあるが…)

結局、その日以来、彼と言葉を交わすことはなかったため、本当に1日限りのゲストとなった。

それでも、たぶん彼のことを忘れることはないだろう。

私の見立ては思わぬ形で証明されることになりそうである。

スポンサーリンク