ペンパルサイトを使っていると「日本語を勉強したいので、私に日本語を教えてください」と言う人に出会うことが多い。
一番多い層はひらがなや小学校の中学年で習うような簡単な漢字は覚えたので、会話の練習相手になってほしいという人たちである。
中には「読み書きは後から覚えるから最初に会話のフレーズを教えてくれ」と頼み込んでくる猛者もいるが、その自信はどこから湧いてくるのだろうか?
「人にものを教えること」に関しては素人の私にとっては、彼らにどのように日本語を教えればいいのかは分からないので、とりあえず外国人向けの日本語フレーズ集を買って、その中のフレーズを教えることにした。
「最近は暑くなってきました」
「週末は何をしますか?」
など。
しかし、これを教えると
「それはもう知っている」
「そんな言葉を覚えても使わないと思う」
「もっと、使える言葉を教えてほしい」
と言ってくる人が多い。
「じゃあ、あなたはどのような日本語を勉強したいの?」
と聞いてみたところ、こういうふうになりたいと言って、日本のアニメや漫画のキャラクターを挙げられる。
・・・
・フォーマル日本語とカジュアル日本語
日本語では「敬語」と呼ばれる言葉がある。
狭義では目上の人間に対する丁寧な言葉のことだが、ここでは初対面の相手に使用する「ですます口調」の「丁寧語」として考えてもらいたい。
これを英語で「formal Japanese(フォーマル日本語)」と呼ぼう。
一方で、親しい関係の相手に使う「タメ語」または「普通語」と呼ばれる言葉がある。これは「casual Japanese(カジュアル日本語)」と呼ぼう。
外国人がどちらの日本語から覚える方が簡単かどうかは一概に言えない。
ただし、日本人と会話をする時は「フォーマル日本語」を使いさえすればトラブルになることはないと思うので、私はこちらから覚えた方がいいと彼らに伝える。
だが、これを伝えると、「コイツはつまらない説教おやじ」だと思われるのか、その後はほぼ100%返信が来なくなる。
困り果てた私は、ある程度の日本語(日本語能力検定の3級くらい)ができる外国人にこのことについて意見を伺った。
彼らの中には「最初はフォーマル日本語から覚えた方がいい」と言う人もいたが、意外にも「カジュアル日本語から覚えた方がいい。(少なくと自分はそうしていた)」と言う人が多かった。
一番多かった理由は、「日本語の勉強は音楽やアニメ、漫画など自分が興味のあるものから始めたので、自然とカジュアル日本語から覚えるようになった」からというものだった。
・どこでそんな言葉を覚えてきたのか?
たしかに「ああ、この人はアニメや漫画を見て覚えた言葉を使っているな」と思われる傾向を見せた人はいた。
その傾向を2つほど紹介しよう。
傾向①:普段は丁寧な言葉を使っているのになぜか突然乱暴なフレーズが出てくる。
(ケース1)
某外国人A:「私は両親と一緒に住んでいます。あなたはどうですか?」
早川:「一人で住んでいます」
某外国人A:「そうか」
(ケース2)
早川:「あなたの国についていくつか質問してもいいですか?」
某外国人B:「勝手にしろ。私は何でも答えます」
(ケース3)
早川:「学生ですか?それとも働いていますか?」
某外国人C:「大学生です。お前はどうだ?」
このように突然、乱暴なフレーズを使う人がいる。これは漫画やアニメのセリフを見て覚えたのだと思う。
その他にも「お前には関係ない」、「ちょっと待て」などがある。
傾向②:極端に敬語を嫌う人がいる
日本人は仕事以外の場面でも、初対面の相手にタメ口で話されるとイラッとすることが多いと思う。
しかし、外国人は全く逆に「敬語で話されるのは嫌だ!!」と言う人がいる。
理由は「あなたは私と友達になる気があるのか?」とか「仕事相手と話しているみたいでストレスを感じる」というもの。
だから、私にも同じようにカジュアルな言葉を使ってほしいと頼まれることがあるが、個人的には、初対面の人にそのような言葉を使うことは抵抗がある。
子どもの頃から、家でも学校でもフォーマルな言葉を使うように言われ続けたからでもあるが、そもそも、地方出身の私は「カジュアル日本語」を上手く使うことができない。
自分の書いた文章に妙な違和感を覚える時がある。
そのため、できれば「フォーマル日本語」を使いたいのだが、中には「どうしても敬語を使わないで!!」という人もいる。
・どっちを覚えるべきか本人次第
これまで、最初にフォーマル日本語を覚えてからカジュアル日本語を覚えるべきだと思い込んでいたが、彼らを見ていると「カジュアル日本語から覚えてもいいんじゃないか」と思うようになった。
結局のところ、本人の目的に合わせて覚えればいいと思う。
もし日本で働きたいと思っているのならフォーマル日本語を勉強して、サブカルチャーに興味があったり、日本人の友達と仲良くなりたいのならカジュアル日本語を勉強すればいい。
というわけで、最近は「カジュアル日本語を勉強したい」と言う人にはできるだけ、同じような文章でメッセージを送るようにしている。
ただ、未だに自分の書いた文章を読んでいると気持ち悪くなる時がある。