発音記号は初めから完璧に覚える必要はない

英語を勉強していると「発音記号」というものを目にする時がある。

見慣れた文字が多いが、「ː」、「ə」、「ɔ」、「θ」、「æ」のように26文字のアルファベットとは異なる記号も存在する。

ほとんどの単語帳にはスペルと一緒に発音記号も併記されているが、これらの発音記号も覚えた方がいいのだろうか?

私の結論を言わせてもらうと、「完璧に覚える必要はないが、読み方は覚えた方がいい」ということになる。

どんな意味なのかを簡単にまとめると

・正しく発音はできなくても読み方は覚える。

・口の開け方や、舌の使い方、日本人にとって区別が付きづらい「r」と「l」の違いのような細かい点は無視してもいい。

・「ʌ」「ɑ」「ə」は日本語の「あ」、「ː」は「-」のような延ばす音(長)というように、いきなり英語として覚えるのではなく、先ずは日本語として覚える。

ということである。

完璧ではなくても、単語を覚える際に発音記号を通して「大体どのような発音であるか」を知るだけでも、随分と楽に記憶できる。

口の開け方や舌の位置、「ʌ」と「ɑ」と「ə」の違いを身に着けるようなことは、ある程度、慣れてからでも十分である。

念のために言っておくと、全く覚えずに勉強を進めることも不可能ではない。

know」や「『work』と『walk』の違い」のような例外はあるにせよ、英語は日本語や中国語と違い、文字を見るだけでも大体の発音は想像できる。

また、スペルを間違えることで、テストで失点することはあっても、発音記号を知らなくてもテストに影響することはほとんどない。

実際に私は発音記号など完全無視して英検準1級に合格した。

「発音記号など見なくても、CDを聞いて耳で覚えればいいじゃないか?」と思う人もいるかもしれない。

実はかつての私はそのように考えていた。

というわけで、今日は私がなぜ前述のような結論に至ったのかについて書いていきたい。

・付属の音声が役に立つとは限らない

私が発音記号の勉強を始めたのは比較的最近だが、その存在を知ったのはずいぶんと前になる。

いろいろあって、21歳の時に英語の勉強を始めたわけだが、学生時代にろくに勉強をしていなかったため、最初は単語帳を使って初歩的な1800程度の単語を覚えることから始めた。

その単語帳には親切にも発音記号の解説も載っていた。

そこで初めて発音記号を知ったのだが、勉強を始めた(再開した)ばかりであったため、全くと言いほどチンプンカンプンであり、例として前段でも取り上げたように「ʌ」も「ɑ」も「ə」もすべて同じ「あ」にしか思えなかった。

ただ、いくら英語が「文字を見るだけである程度の発音は想像できる」といっても、「know」という基本的な単語を「クノウ」と発音するようでは後々後悔することになってしまうと思い、スペルを覚えた後で付属のCDを使い発音を確認することにした。

「発音記号など覚えなくとも、CDの音を聞いて、それらしく聞こえる音を日本語でメモすればいいか」

そう考えていたのだが、それは間違いだった。

なぜなら、音声が英単語→和訳(日本語)のセットだけならその方法でもよかったのだが、そのCDは英語→和訳→例文英語の順で収録されていたため、すべての単語に耳を通すために膨大な時間がかかってしまう。

ちなみにこの本ではないが、たとえ英単語→和訳(日本語)だけであっても、ひとつの単語に複数の訳語が載っており、それらがすべて吹き込まれているため、とてもテンポが悪い場合もある。

このような本が多々あるため、「付属のCDが役に立たない」というケースも珍しくない。

・ようやくCDを使うも発音には無関心

さて、CDから発音を学ぶ道が絶たれた私は「先ずは文字の読み書きができるように」と考えていたこともあり、読み書きには関係のない発音を同時に覚えるのは効率が良くないと思い、発音は一旦無視してスペルの書き取りから始めた。

発音記号、使えないCDという2つの挫折から、無意識のうちに「発音アレルギー」に陥った私は、それ以来当面の間、発音に関しても、リスニングに関しても一方的に避けて、読み書きの勉強ばかり行っていた。

初めて付属のCDを本格的に使用したのはこの記事で紹介した「どんどん話すための瞬間英作文トレーニング」に取り組んだ時だったため、勉強を始めてから1年以上経った後だった。

しかし、その本にせよ、その後で使用した「会話できる英文法大特訓」にせよ、登場する単語は簡単なものだったため、そこである程度の発音を覚えたり、勘違いを修正することはできたが、特に発音を学ぶことの重要性を痛感したわけでもなかった。

「会話できる英文法」の姉妹本である「英単語フレーズ大特訓」は単語に重点が置かれているため、発音記号も記載されていたが、その本を使用していた時も、明らかにスペルとCDの音声に差があると感じた場合だけ、それらしく聞こえる音をメモしたが、発音記号を覚えようとも思わなかった。

・結局、スタート地点へ戻る

このように発音には全く手を付けず勉強して、英検準1級まで合格したわけだが、さすがにこのままではいけないと感じることが増えてきた。

先ず、リスニングの時に困る。

「自分が発音できない音は聞き取れない」ということはよく言われている。

この説が事実かどうかは知らないが、私の場合は「発音できない」以前に「知らない」状態だったため聞き取れるはずなどない。

そんな動機からようやく重い腰を上げるようになり、その時にようやく、ほとんど音が出ない子音の発音や、リンキングを知った。

それが、英語の勉強を始めてから5年ほど経った時である。

ただ、その時ですら、「発音記号を覚えよう」とは思わなかった。

ようやく発音記号と向き合うこととなったのは、さらに数年後のことである。

当時は英検に合格して少し時間が経ったため、受験のために覚えた単語を改めて復習していた。

すると、何年も使用していなかったためか、完全に忘却してしまった単語が結構な数出てきた。

このことには少なからず衝撃を受けた。

あれだけ、毎日のように繰り返し覚えたことであっても、時が経てばこうも簡単に忘れてしまうのか…

その時になって、ようやくこれまでの勉強方法を見直すことに決めた。

そこで、文字だけで覚えるのではなく発音も一緒に覚えることにした。

単語帳に付属していたCDは英語→和訳の後に例文が入っていたが、幸いにも1つの単語に対して、1つのファイルが割り振られていたため、例文に入った瞬間、次のファイルへ移動すれば時間を短縮できる。

そのように、音声を聞きながら、スペルと発音が明らかに違う単語を見つけた時は、単語の横に書き込みを入れることにした。

のだが、本を開き、音源を操作し、ボールペンで書き込みを入れるということを同時にやることは、もはや「勉強」ではなく「作業」であるため、膨大な手間がかかるだけでなく、内容が全く頭に入ってこない。

そのため、およそ50語を超えた時点で他の方法を探すことにしたのだが、そこで、ようやく発音記号を覚えることにした。

そして、最初に使用していた単語帳を本棚の奥から数年ぶりに引っ張り出して、長年避けていた発音記号のページに目を通すこととなった。

しかし、いくら英検準1級に合格したとはいえ、多少リスニングを勉強したこと以外は、全く発音のことなど学ぼうとしなかったため、最初からすべて覚えるのは無謀だと感じた。

そこで、先ずは冒頭で説明したような簡単な覚え方から始めた。

だが、それだけでもCDで聞いた音と大きな違いはなく、試しに、それまでCDから聞き出した音をメモをしていた単語と比べてみると、ほぼほぼ一致していた。

そのように、完璧ではないにせよ、発音も意識すると、随分と単語の記憶も長持ちするようになった。

というわけで、最初からすべてを完璧にマスターすることはできなくても、とりあえずは、日本語に近い音で覚えて、単語を覚える際に記号を読める程度のところからでもいいので、発音記号を覚えることを勧める。

もっとも、今となっては

「なんで、そんな当たり前の考えにたどり着くまで何年もかかったのだろう…」

「もっと早くそのことに気付いていれば、単語を覚えるための時間を短縮できたのではないか…」

と後悔しているのだが…

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