私はこれまで英語の文法を身に着けるために使用した方法として瞬間英作文を紹介してきた。
これは日本語の問題文を瞬時に英訳することで、英文法の型を身に着ける学習法である。
これらの本には日本語の音声が読み上げられてから、解答となる英文が流れるまでのインターバルの時間が数秒間ある。
例
(問題)
「私は車を2台持っています」
↓
ココの時間
↓
(解答)
「I have two cars.」
今回の記事を書くにあたって、私が先述の記事で紹介してきた本のインターバルの時間を調べてみることにした。
先ず最初に紹介したどんどん話すための瞬間英作文トレーニング CD BOOKのインターバルは3秒である。
次に、ネイティブの「英会話が口からパッと出る」英作文トレーニング(今は絶版)は少し短く2秒である。
そして、会話できる英文法大特訓は幅が広くて2.5~4.5秒である。
この本は英語の解答が流れるまでの時間がバラバラで
「それはテーブルの上にあります。」
などの簡単な問題は2.5秒で、
「困っている人を助けようとする人を私は尊敬します」
というような関係詞を使った長い問題は解答時間が4.5秒あるなど、問題によって差がある。
このように問題文が極端に長いものでなければおおよそのインターバルの時間は2~3秒になる。
しかし、この類の本にはインターバルの時間が1秒程度の本もある。
ネイティブと英語で会話するためには、思ったことを瞬時に口にしなければならないという著者からのメッセージだろうか?
・音声を聞いて、すぐに口に出ることは努力の証であるとは限らない
これらの本のように日本語の音声を聞いて、短時間で英作文を作る練習を続けていると、段々と英語が出てくるまでの時間が短くなってくる。
最初は「この英文を3秒で作ることは無理だ!!」と思っていても、5.6回と繰り返していると、徐々に慣れてきて、次第には「3秒なんて長すぎる」と感じることもある。
これは学習が進歩した証である。
…と言いたいところだが、実のところ、それは危険な考えである。
同じ本を何周も繰り返していると、次第に「この辺りにはどの問題がある」というパターンが無意識に頭に入ってしまう。
そのため、「私は車を2台持っています」という問題のナレーションを聞いていると、途中の「私は車を…」の時点で、フライングして「I have …」と口走ってしまうこともある。
今さら説明不要だろうが、日本語と英語では文法が全く異なるため、日本語をすべて聞き終えてからでないと、この練習は意味がない。
にもかかわらず、日本語読みの途中で解答が出てくるのは、日本語を英訳しているのではなく、場所で記憶しているためである。
これは英単語を覚える時も同じである。
「こんなに毎日、単語帳で練習しているのに、英文を読む時は全然思い出せない!!」と嘆いている人がいるが、彼らは単語を見て意味を思い出しているのではなく、何ページの何番目、XXという単語の次、というように場所で覚えているため、それ以外の場面で出くわすと途端に混乱する。
何度も繰り返し練習しているのに、使いたい場面ではなかなか取り出せないのは、繰り返して飽きることで集中力が低下しているのではなく、このように誤った習慣で学習を続けている可能性が高い。
かつて、私が車の免許を取得するために教習所へ通っていた時、指導教官がこんなことを言っていた。
なんだか、英語の勉強もこれと似ている気がする。
学習がなかなか進まないのは、始めたばかりでまだ慣れていないことよりも、ある程度繰り返して自信をつけてきた時の慢心の方が、進歩を阻害する可能性が高いのかもしれない。