先日、台風が発生し、テレビやネットで多くの報道を見聞きした。
雨風の強弱と共に最も気にするものは進路予想である。
今回に限らず、台風の進路予想では度々こんな流れを目にする。
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沖縄付近で発生。
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北上して九州を直撃。
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そのまま行けば朝鮮半島へ抜けそうなところで進路を東へと変え、中国・四国地方を通過。
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そして、近畿、中部を経て関東へ(場合によっては北陸、信越)。
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その後は急に北向きに進路を変え、東北地方を縦断しながら北東北あたりで消滅、あるいは太平洋へと抜けていく。
一連の動きを一言で表すと「日本列島直撃」である。
気象予報でこのように、まるで台風が日本の国土を踏みつけるように進んでいく予想を見かけることは珍しくない。
これを見る度に私は毎回こんなことを言いたくなる。
台風は日本列島に何か恨みでもあるのか!?
・台風が日本列島沿いに進む理由と予報が当たる確率
まるで、意図的に日本列島を襲うような進路を取る台風を見ていると素朴な疑問が浮かぶ。
「これは気象条件によって、本当に日本列島に沿って進むものなのだろうか?」
「それとも、これは『近いうちに間違いなく起きる南海トラフ巨大地震に備えよ』といった警鐘を鳴らす報道と同じく、メディアが最悪の状況を想定して国民に警戒を促すために描いているのではないか?」
実際、報道ではしばしば「最悪の事態に備えてください」という言葉が繰り返される。
台風の進路予想も、そうした「もしもの備え」として日本をなぞるような線が強調されているのではないか?
結論から言えば、これは意図的に「最悪シナリオ」を描いているわけではなく、気象条件に基づいて自然にそのような進路になりやすいようである。
台風は熱帯の海上で発生する低気圧であり、その動きは周囲の大気の流れに左右される。特に大きな影響を与えるのは「太平洋高気圧」と「偏西風」だ。
発生直後の台風は、太平洋高気圧の縁を回るように北上する。
そして日本付近に差しかかると、中緯度に吹く「偏西風」に捕まり、進路を東へ変える。
夏から秋にかけての典型的な気圧配置では、ちょうど日本列島をかすめるように台風が進むパターンが多くなる。
そのため「列島に沿って進む」ように見える進路図が度々現れるのだ。
つまり、台風が日本列島を追いかけるかのように進むのは、地形ではなく上空の気圧配置と風の流れがつくり出す自然な現象である。
台風はなぜ日本に曲がって来るのか?北上してくる理由を図で解説! | つくえのひきだし
では、実際に「日本列島に沿う進路予想」がどの程度当たっているのか。
残念ながら、「そのような予想が的中する確率」を示す公式な統計は存在しない。
ただし、進路予報そのものの精度は年々向上しており、例えば24時間先の予報誤差はかつて200km以上あったものが、現在では80km程度にまで縮小している。
3日先でも200kmを下回ることが多い。
これは「予報円の中心がかなり高い確率で実際の進路をカバーできている」ことを意味する。
とはいえ、これだけでは、「予報通り、台風が日本列島を(嫌がらせのように)直撃する確率」については何とも言えないので、あくまでも「予報の精度が上昇している」という程度で理解すべきだ。
・台風○号の由来
個人的に台風発生のニュースを聞いて疑問に思っていたもう一つのことは、「台風1号」、「台風2号」といった番号の由来である。
これはどこから来ているのだろうか。
答えはシンプルで、その年に発生した順番である。
毎年1月1日以降に最初に発生した台風を「1号」とし、以後「2号」、「3号」と順に数が増え、年が変わればリセットされ、翌年の最初の台風は再び「1号」となる。
この番号付けは日本の気象庁が行っており、北西太平洋で発生した台風に適用される。
なお、一度発生した台風が衰えて「熱帯低気圧」になった後で、再び発達して台風になった場合は同じ番号を付ける。
加えて、台風には番号とは別に国際名も与えられており、これは日本を含む14の国と地域が提案した名前を順番に使う仕組みになっている。
「号数はその年に生まれた順に附番する」
こうしてみると、あまりにも簡単な理屈、常識的に考えて「それ以外あるわけないだろ!?」と言いたくなるが、恥ずかしいことに、私は長い間その可能性を一切考えつかなかった。
なぜなら、ニュースで大きく報じられている台風情報の主役は、毎年「台風19号」や「台風21号」といった二桁番号の台風ばかりで、「台風1号」や「2号」の名は滅多に耳にしなかったからである。
しかも、前述の通り、一度熱帯低気圧になった後で、再び発達して台風になった場合は同じ番号が付くため、ニュース報道では「(やって来るのは)21号→19号→24号」のように、必ずしも順番通り出て来るとは限らない。
だから、てっきり「台風の号数は発生した場所や時期などで決まる」と思っていた。
ほぼほぼ2桁以降しか聞かないのは台風の発生時期と関係している。
1号や2号が発生するのは冬から春にかけての時期であり、この頃は海水温がまだ低く、台風が発達しにくい。
また、発生場所もフィリピンや南シナ海周辺など、日本から遠いエリアに偏っており、そのまま北上せずに消滅することが多い。
一方で、日本に大きな影響を与えるのは夏から秋にかけてで、この頃に発生する台風は10号や15号といった番号になることが多い。(2025年は6月11日に1号が発生したようだが)
したがって、「1号や2号で大きな被害が少ない」という印象は統計的にも裏付けられている。
こう説明すれば、かつての自分の黒歴史の言い訳ができるだろうか…