「未婚率がXX年連続で増加した!!」
「このまま少子化が進むと国が亡びる!!」
こんなことが言われて何年経っただろうか?
よく言われる未婚者の増加と少子化の原因は
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002gruv-att/2r9852000002gryz.pdf
である。
この流れを見ると、国が景気を回復させて、企業が正社員の雇用を増やせば、この問題は解決するかのように思える。
とはいえ、これから先、好景気が続いたとしても企業がかつての高福祉・高給取りの正社員を増やすとは思えない。
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ということで、日本にも男性世帯主が一家を支えるというモデルを捨てて、社会保障のを充実と夫婦共働きモデルへの移行で少子化を解決しようとするヨーロッパモデルを導入しようという人もいる。
というよりもそれ以外に解決策が見つからない。
・なんとな~く現状維持で安心する
私は個人的にその意見に賛成するのだが、この社会が本気で変わろうとするとは思えない。
考えてみてほしい。
国が社会保障を充実させるには財源が必要である。
政府はそのための増税を堂々と主張できるだろうか?
彼らにしてみれば、漠然とした「景気回復」というスローガンを掲げて、企業に社会保障費を押し付けることができる日本型社会保障を維持する方が遥かに都合がいい。
企業にとっては高い維持費がかかる日本型社会保障をこれ以上続けることは勘弁してもらいたいが、一方で従業員を好き勝手に使える正社員モデルは手放したくない。
というわけで、「共働きモデル」や「女性活躍」なんて言われても女性の正社員を増やすのは嫌がる。
だから今まで通り、男性正社員を徹底的に使い倒す。
国民は増税でこれ以上生活が苦しくことを嫌がり、昔ながらの「正社員のお父さんが一家の大黒柱で、専業主婦もしくはパートのお母さんと子ども、年老いた両親を養う」という昭和モデル(本当に昭和の人が全員このモデルに当てはまっていたのかは疑わしいが)に精神的な安定を求める。
このように三者にとって「なんとな~く現状維持」というのが一番の落としどころになっているような気がする。
その結果、問題は放置されてどんどん悪化していく。
「だから、いつまで経っても、未婚と少子化の問題は解決しないんだよ!!」
と思いながら、この問題をフランス人のシングルマザーに話したことがある。
彼女は男性中心の企業社会や特定の家族形態しか守ろうとしない社会保障制度を批判していたが、一点だけ気になることを言われた。
フランスでは働く女性のサポートや共働きで家事を分担することの理解は日本よりも進んでいる。
でも未だに自分一人で家族を養うことができるだけの収入がないことを理由に、付き合っている人がいても、結婚はしたくないと考えている男は多い。
これは意外だった。
この分野では日本よりはるかに先進国であるイメージの強いフランスにも、まだこんなことを言う男はいたのか!?
と同時にこの問題の深さを感じた。
所詮は小さな男のプライドの問題に過ぎないのだが、たとえ社会保障を充実させても、このプライドが邪魔をして結婚したくないという人までは変えられない。
(もっともフランスでは結婚しなくても子育てにそれほど不自由はないとも言われているので、結婚しない=不自由・不幸・少子化問題の悪化ではないが・・・)
・スティグマか、自意識過剰か?
「自分には一人で家族を養うだけの収入がないから結婚したくない!!」という考えはどこから来ているのか?
英語にstigma(スティグマ)という言葉がある。
これは社会的に劣ったものだという烙印のことであり、今回のケースでは「家族は男が一人で養うものだ」という(間違った)社会規範を持った人が、その規範に反しているとみなした人、たとえば一人で家族全員を養う収入を稼げない男性や全く逆に女性に養われている男性を徹底的にバッシングする。
だから、それを恐れて、結婚したい相手はいるが結婚できない。
このようなスティグマは教育や宣伝を通して止めさせることができるが、「自分は一家の大黒柱になれないから結婚したくない」という考えは本当にスティグマだけから生まれるのだろうか?
これは私が考えた架空の話である。
ある日、実家に帰ると母親から、小学校の元同級生だった〇〇君(男性)が結婚したということを聞かされた。
相手はバリバリのキャリアウーマンで一千万近い年収を稼ぐ。
一方で〇〇君はどこに行っても仕事が長続きせずに、現在は無職ですべての家事を任されている。
ちなみに奥さんは子どもを生んだが、すでに職場に復帰しており、育児は〇〇君が担当している。
父権主義的な視点から見ると〇〇君は明らかにろくでなしのヒモ男だが、奥さんは〇〇君のことを心から愛しており、家族仲良く暮らしている。
この話を聞いてあなたはどう思うだろうか?
恐らく、ほとんどの人は〇〇君のことを情けない奴だとも最低の夫だとも思わないのではないだろうか?
意外にもこの社会はリベラルで寛容な人が多いのではないかと思う。
では、そのように(社会的には)リベラルな考えを持っている男性の中で「自分の稼ぎだけでは家族を養うことはできない。
でも、(〇〇君のように完全に女性に養われるとまではいかなくても)相手も自分と同じ位の収入があって、彼女は「自分も働くから二人で家計を守ろう」と言ってくれている。
だから、彼女のお言葉に甘えて結婚します!!」と言える人はどれだけいるだろうか?
今度はほとんどの人が「自分はそんなことはできない」と言うのではないだろうか?
不思議ですねえ。
人にはリベラルな態度を示しながら、自分は父権主義丸出しな考えで「女に家計を支えてもらうなんてとんでもない!!」と言うなんて・・・
って、他人事のような書き方だが、私も同じ状況に直面したら似たような行動をするだろう。
口では「特定のモデルしか結婚を認めない社会はおかしい」と言っているにもかかわらずである・・・
自意識過剰と言えばそこまでだが、本人にとっては重大な問題だったりする。
まあ、私にはそんな相手もいないので、こんなことを考えるのは時間の無駄なのだが・・・
というわけで、「父権モデル」から「共働きモデル」に移行も「男女平等」も社会保障だけでは解決しない大きい問題が存在するように思える。