これは今からちょうど2年前の話である。
当時のゴールデンウィークは10連休であり、私はその休暇を利用して実家に戻っていた。
彼から届いたメールを開けたのは、その帰省から東京へ戻ってきたまさにその時だった。
・商品の仕入れを手伝ってほしい
その彼とは某国(仮名:A国)に住む外国人で、ペンパルサイトを通して私に儲け話を持ちかけてきた。
彼は仲間たちと共同で酒の販売業を営んでおり、主に仕入れ業務を担当している。
ここでの名前は「バイヤーX」にしよう。
彼は日本語に堪能で、私に日本語でメッセージを送ってきた。
私たちはお互いの仕事や生活について簡単に自己紹介をした。
私が東京に住んでいることを告げると、彼はこんな話を切り出してきた。
普段であれば、そんな怪しい話は断るが、当時の私は仕事で良い思いをしておらず、退職を考えており、副業やサイドビジネスに関心があった。
また、このブログを始めてペンパル関係のネタを仕入れたかったこともあり、先ずは話だけでも聞いてみようと思った。
彼はA国で酒の販売業を営んでいることを告げ、住所や連絡先、事業認可らしきものが印字されたリストを提示した。
一応、Googleでその場所を検索してみると、確かにその住所は実在していた。
彼の要求はある銘柄の酒を購入し、それを彼の下へ発送することである。
彼曰く、その酒はA国でとても人気があるのだが、A国内の業者から仕入れると日本で購入する時の2倍以上の値が付けられている。
そのため、できるだけ日本で購入しているが、その都度来日すると交通費もバカにならない。
そこで、東京に住んでいる私を仲間にして、彼が仕入れたいタイミングで、私が購入し、A国に発送すれば、費用を削減できると考え、この話を持ちかけてきた。
購入先の店は彼が調査済みであるため、指定された店で購入すれば、私が直に調べる必要はない。
ちなみに私への報酬は酒1本につき購入金額の20%である。
試しにその酒の価格を検索してみると、おおよそ1万円から2万円である。
間を取って1万5千円だとすると、その20%は3000円である。
これはなかなかの金額である。
・交渉決裂
さて、次に確認したいのは報酬の受け取り方法である。
いよいよ、本格的にアングラな香りが漂ってきた。
銀行振り込みにするのか、それとも彼名義のクレジットカードでも渡すのだろうか?
彼が提示した方法はこのようなものだった。
いや、さすがにそれではこちらのリスクが大きすぎる。
しかも、購入先の店も指定されているため、その販売業者もバイヤーXとグルで、私に大量の商品を購入させて、その後トンズラする可能性があることも否めない。
私としてはそんな危険な支払方法は容認できない。
他の支払方法はないかと聞いてみたが、彼の方もリスクを考慮すると、この支払方法以外は検討しないと言われた。
こうして私たちの取引交渉は決裂した。
あれから2年経ったが、彼から連絡が来る事は二度となかった。
彼は本当にビジネスの協力者を探していたのか、それとも悪質な詐欺師だったのかは定かではない。
私は彼の申し出に耳を傾けてみたが、読者の皆様がこのようなことが起こった場合はすぐに断ることをおすすめする。
私は貿易のことは素人だが、酒のような嗜好品を海外へ発送する場合は関税がかかる可能性もあるため、知らずの内に密輸の片棒を担がされる危険性もある。
この手の話に首を突っ込んでしまう物好きの人もいるかもしれないが、その場合は最初に「話は聞きくが、まだ合意はしない」とはっきりと宣言しておこう。
一旦請け負って、計画を全部聞いた後で、「やっぱり断る」と言ったら、「私の話を聞いてしまったよね? もう遅いよ」ということが起こりかねない。
・安易な紹介も控えた方がいい
今回のケースはかなり具体的な計画を聞かされたが、それ以外の儲け話を1年に1回という結構なペースで持ちかけられる。
たとえば、「宝石の販売をしているから、興味がある人を紹介してくれたら、数パーセントの紹介料を払う」とか。
儲け話ではないが、似たような話で、「このような人を紹介してほしい」というリクエストが来ることもある。
「観光業を営んでいるため、旅行好きの人を紹介してほしい」とか。
このような要件であれば、「まあ、いいか」という安易な思いから知人を紹介してしまうかもしれないが、たとえいかがわしい相手でなくても、ネットで知り合った人に知人を紹介することは慎重に考えた方がいい。
以前、私も「日本語の勉強をしているから、Skypeで会話ができる人を紹介してほしい」と言われたため、深いことは考えずに、彼と同じく「Skypeを使って日本語でやり取りをしたい」と言っていた人を紹介したことがあるが、その人物の目的は日本語の練習ではなく、自分のわいせつ物を見せびらかすことだった。
その時は大ごとにならなかったが、関係者への連絡で一苦労するハメになってしまった。