警察は「少しでも詐欺だと思ったら110番!」って本気で言っているのだろうか?

私は、出勤の日はいつもテレビを見ながら朝食を取ったり、身支度をしている。

いつも見ているのは報道番組なのだが、寝起きは頭がボーっとしているためか、天気予報を除くと、ニュースの内容はほとんど頭に入っていない。

というわけで、詳細は全く憶えていないのだが、たしか「学生たちの活躍により、高齢者を狙った振り込め詐欺を事前に防ぎ、彼らが警察から表彰を受けた」というようなニュースを見た。

学生たちが表彰される映像が流れた後、警察署の署長と思われる人のコメントと、番組スタッフが作成した注意喚起として、全く同じ発言がなされたことが印象的だった。

それは・・・

「少しでも怪しいと思ったら、すぐに最寄りの警察署、もしくは警察へご連絡を!!」

というもの。

その呼びかけ自体は決しておかしなことではないし、過去にも多くの場面で聞かれたことである。

だが、私はその発言を聞く度にこんな懐疑的な想いをしてしまう。

「警察って、本当にそんなことを思っているの?」

今日は私がそう思うことになったエピソードを紹介させてもらいたい。

・地元に帰れないからお金を貸して…

これは今から9年前の2014年のことである。

私は親元を離れて地元の県庁所在地で暮らしていた。

季節は今と同じ真夏で、外に出るのも億劫になる程の暑い日だったが、当時の私は2ヶ月近く無職だったため、家に籠る方が頭がおかしくなりそうだったこともあり、外出していた。

駅の近くに大型のビルがあり、そこの書店で本に目を通したり、100円ショップで数日分の食材を仕入れることが、その頃の日課だった。

そのビルは私の住まいから見ると、駅の反対側に面していたため、そこへ行くためには駅の中を通り抜ける必要があった。

その日も例によって駅に入ろうとすると、入口で中年の男性に声を掛けられて、「ちょっと、話を聞いて欲しい」と言われた。

彼の話によると…

  • その男性はトラックドライバーをしており、近くの工場に荷物を運ぶために、大阪からやって来た。

  • 配達は無事に完了したが、工場を出ようとしたらトラックが故障して帰れなくなった。

  • 手持ちの所持金を全部出しても大阪へ戻るお金が足りない。

  • 近くの警察に相談したら、5000円は貸してくれたが、それでも足りない。

  • 会社員ではなく個人事業主であるため、会社に相談することも出来ない。

  • だから、少しでもお金を貸して欲しい。

怪しさ満点で典型的なお涙頂戴の詐欺の手口である。

個人事業主とはいえ、彼がトラックと共に大阪に帰らないと、次の配達に支障が出て、工場内の生産にも影響が出たり、故障したトラックをいつまでも放置されたら、他の車の駐車や荷物の搬入出に支障が出るため、配達先の関係者が全く助けてくれないとは思えない。

それに、「警察が善意でお金を貸してくれるなんてことは絶対にない」とまでは言わないが、足りないと分かっているのに、中途半端に5000円だけ渡して、「後は自分で何とかしてね♡」と突き放すとも思えない。

その場を上手く切り抜けた私は、近くの交番に報告することにした。

当時はすでに、至る所で振り込め詐欺への注意喚起が行われており、冒頭の学生たちのように、事前に防ぐことに協力して、警察から表彰を受けるといったニュースも頻繁に報道されていた。

「私もヤツを警察に通報して、詐欺師の逮捕に一役買えば、表彰される!!」

というようなヒーロー願望はなかったが(もし表彰されたら、「早川 鉄男さん(2X歳、無職)」と報道されるから、それはそれで困る)、放っておいて他の被害者を出すわけにもいかなかった。

それに、万が一、あの男の話が本当だったとしたら、5000円だけ渡して冷たく突き返した警察官の行動もいかがなものかと思うので、そのことも確認しようと思った。

・あなたはお金を取られていないんでしょう?

警察署に入ると、当時の私と同じくらいだと思われる若い女性が「どうされました?」と声をかけた。

このような話をする時は回りくどくならないよう結論から言う必要があると考えた私は、すぐに「怪しい男からお金を貸して欲しい」と言われたと告げた。

その後は、先ほどの男が言った内容を説明し、「もしかしたら、あの男は詐欺師かもしれない」という所まで話すと、奥の方に座っていた年配の男性警察官が話に入ってきて、こんなことを言ったのである。

「『詐欺』と言われても、あなたはお金を取られたわけじゃないんでしょう!?」

「それでは、警察は動けませんよ」

!?

たしかにそうだが、彼は私の話を聞いても、怪しい男が嘘をついて、お金を騙し取ろうとしていると思わないのだろうか?

そこで、あの男が言った「警察に相談したら、5000円だけ恵んでくれた」という話も出して、「本当に警察がそんな対応をすることもあるのか?」と問い質すと、かったるそうに、「まあ、個人的に同情したら、そういうこともするでしょうねぇ~」と言われた。

さらに、この怠慢警官はこんな対応に出た。

警察官:「あなたは特に被害を受けたわけではないんだから、一体私たちにどうして欲しいの?」

何なんだ、こいつは!?

普段は世間に向けて「振り込め詐欺撲滅のため、少しでも怪しいと思ったら、警察へ相談を!!」と呼びかけているのに、やっていることが全く違うじゃないか!?

まるで、「事件になっていない案件を相談されても、迷惑だし、時間の無駄だから帰れ!!」と言わんばかりの態度である。

ここで引き下がったら、この不良警官の思いのままになってしまう。

早川:「『そういう怪しい男がいる』ことを報告に来たんですよ」

警察官:「そうですねぇ~。それじゃあ、念のため確認に行きましょう…」

ここまで言ってようやく重い腰を上げた。

私は声を掛けられた場所へ行くと、先ほどの男はすでに姿を消していた。

その後は、警官から男の特徴の説明を一通り求められ、「今回の件は一応警察の方でも共有しておく」と言われて解散となった。

・警察の対応は当時よりもマシになったのか?

こちらも粘ったかいがあって、最低限の仕事はしてもらえたが、あれだけしつこく「詐欺に注意!! 詐欺に注意!!」と言いながら、実際に怪しい人物を通報したら、

「事件になっていないから動かない!!」

「あなたは何も取られていないから詐欺じゃない!!」

駄々をこねて動こうとしない警察の怠慢ぶりには呆れた。

これが警察の本音なのか?

「自分の怠慢のせいで、未来の犯罪を防ぐことが出来ないのでは?」という警察官としての良心すらもないのだろうか?

よく刑事ドラマでは、「警察に相談したけど、まともに取り合ってくれなかった」と言って、主人公ではない警察官が悪者として描かれることが多いが、まさにそんな警察官だった。

今思うと、詐欺疑惑だけでは動かないのであれば、無暗に「詐欺」ということを匂わさず、「困った人がいるから来て欲しい」と言って、連れ出す方が効果的だった気がする。

それを放置するのはさすがに自己保身のためにもやらないだろう。

これは今から10年近く前のことだが、現在では警察の対応も当時よりマシになったのだろうか?

当時は振り込め詐欺が普及したばかりで、まだ警察も対策に本腰を入れていなかったのであれば、そのような希望も持つことが出来たが、当時からすでに社会問題になっていたため、この10年でそこまで変化したとは思えない。

もしくは、たまたまやる気がない警察官に当たってしまったとか。

もしそうなら、この記事で紹介した車を衝突されそうになった件のように、私は本当に警察運がない。

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