6月といえば、ジューンブライド。
私自身は独身であるものの、このブログでは、実質1年目だった2019年以来、1年おきに季節ネタとして結婚をテーマにした企画を連載してきた。
というわけで、今年もその法則に従って、結婚に関するネタを3本お送りしようと思う。
前回の2021年は「どうしても結婚したい人へ贈りたい3つの言葉」というシリーズだった。
今年はどちらかというと、結婚後の生活を見据えた話、それも「これから結婚したい」と思う人というよりも、社会に向けた内容をお届けする。
ちなみに、2年に一回というスパンは特に意味はない。
年間通して、結婚や家族に関する記事を多く投稿していたため、わざわざ季節ネタとして扱うことがなかったり、1ヶ月前に運よく大変参考になる書籍を購入したため、その時期に合わせたりと完全にその時のタイミング次第である。
・真面目な人だからこそ心配
昨年(2022年)3月。
私は派遣社員として働いており、同月限りで契約が終了することになっていた。
他の派遣社員もほとんどは契約打ち切りとなり、私も含めて、次の仕事が未定という人も少なくなかったためか、満了日が近づくにつれ、段々とお通夜のようなムードになって来ていた。
そんな時、大々的におめでたい話を報告する人物が現れたのである。
それは課は違うものの同じフロアで働く正社員(仮名:A)で、彼が結婚することになったそう。
当然、別のフロアで働いている人も、彼と顔を合わせる度に「おめでとう!!」と声を掛ける。
私たちにとっては、間が悪いというか、KY感甚だしいのだが、まあ部署が違うということで「ご祝儀」という名の恐喝を受けずに済んだことは不幸中の幸いだった。
彼がいない所でも、周囲は彼の結婚の話題で持ち切りだった。
そんなうっとおしくてしょうがない中、興味深い話が聞こえた。
Aの上司が、私が働いている仕事場にやって来て、私たちの上司とお喋りを始め、例によって彼の結婚について話をしていた。
Aの上司曰く、Aは奥手でシャイな性格だったため、まさか結婚するとは夢にも思っておらず、驚いたとのこと。
そして、こう付け加えた。
「これで彼も身が固まったから、今まで以上に、仕事に精を出すことが出来るだろう」
この言葉に対して、私たちの上司が渋い顔をして懐疑的な意見を述べた。
私たちの上司:「うーん……A君は真面目過ぎる所があるから、逆に少し不安になるんだけど…」
Aの上司:「え!? どういうこと!?」
私たちの上司:「家庭内で上手く行かないことがあったら、きっと、そっちの対応に追われて、仕事に集中出来なくなる予感がするの」
Aの上司:「そんなことあるの!?」
彼女(私たちの上司)によると、かつて実際にそのような部下がいたというのだ。
・結婚前より仕事に打ち込めない理由
その人物(仮名:B)は彼女の部署だけでなく、社内でも屈指の有望株で、しかも真面目でどんなことにも手を抜かない熱心な好青年であり、出世街道まっしぐらだった。
そんな彼が結婚するのだから、ほとんどの人は今回のAの上司同様に、彼が今まで以上に働くことを期待していた。
しかし、実際は全く逆だった。
決して、結婚して堕落したわけではない。
彼は真面目で完璧主義だったからこそ、家族のことも「何でも自分が解決しなきゃ…」と思って、追い込まれたのだ。
たとえば、彼の妻が「結婚・出産後もキャリアを諦めたくない」というスタンスだったため、彼は妻の意思を尊重し、日々の保育所への子どもの送り迎えだけでなく、熱を出した時の急な迎えにも対応していた。
また、彼の実家は東京だが、妻が両親との同居を嫌ったのか(どうかは定かではないが)、結婚を機に実家を出たらしい。
それでも、彼は一人っ子だったため、両親のことを気にかけ、結婚後も頻繁に親元を訪れて、父親が病気で入院していた時もよくお見舞いに行っていたという。
その結果、彼は結婚前より明らかに仕事に打ち込めなくなった。
私たちの上司は理解を示していたものの、そんな彼の結婚生活を見て幻滅した同僚は一人や二人ではなかったという。
そして、大半が、彼の妻に対して「ひどい嫁だ」と陰口を叩いていたらしい。
彼女は彼に同情してか、人事評価をマイナスにすることなく、あくまでも転属という形で比較的負担が軽いポジションへ異動させた。
その話を聞いた時、私は契約を切られたとはいえ、いかに自分が部下想いの素晴らしい人物の下で働いていたのかを知った。
彼女はBに対して慈悲深い心で接していたからこそ、仕事の駒としては劣化したBのことを「使えない存在」と切り捨てるのではなく、彼が抱えるジレンマや葛藤に気付けたのだ。
・家庭を守る妻への対価
私たちの上司は素晴らしい人間だったのだが、一方で、結婚後の彼の様子を「期待外れ」と思ってしまう人が出てくるのも容易に想像できる。
そもそも、私たちは、知り合い、もしくは職場の男性が結婚したという話を聞くと、相手の女性は無条件に「家庭を支えてくれる妻」を想像することが少なくない。
そして、家事や(実の両親も含む)家庭のイザコザをすべて妻に丸投げ出来るから、夫は思う存分仕事に打ち込むことが出来るのだと。
しかし、Bを見れば分かるように、すべての男性が、そんなメンタリティを持った人間ではない。
むしろ、その考えは妻のことを「お母さんの代わり」と思っている男性に限った話ではないのか?
というよりも、世の女性がすべて「そんな妻になりたい」と思って結婚しているわけではないし、少なくとも他人が勝手にそのような姿を期待するのは間違いだろう。
もちろん、そのような家族を望むことは悪いことではないし、他人に求めても良い人もいる。
たとえば、世帯主である夫に、妻が専業主婦になっても十分に生計を維持できる給料(生活給)や手当を支払う会社である。
彼らは自分たちの都合で従業員を転勤させたり、職種替えさせたり、青天井で残業させているのだが、そうした働かせ方の対価として、仕事のパフォーマンスとは無関係に高い給料を払っている。
そのお金があるからこそ、妻が専業主婦として家庭のすべての役割を担い、家族の生活が成り立つのである。
だが、残念ながら、そのような対価は一切支払わずに、「妻が銃後の守りとして家庭を守る」ことを当然のように考えているツラの皮が厚い会社も少なくない。
しかも、従業員を好き勝手にコキ使うことも、生活給を支払わないことも、「ウチにはそんな余裕はない!!」という逆ギレで済ませるのだから質が悪いったらありゃしない。
盗人猛々しいとはまさにこのことである。