なぜかマッチングアプリの利用者から相談を受ける①

私はこれまで「ペンパルサイトのようなオンラインの世界と、実際に相手と顔を合わせる場合では行うべきコミュニケーションの方法が違う」と主張してきた。

ペンパルサイトでは基本的に海外に住んでいる人とメッセージの交換をするため、相手と顔を合わせることはほとんどなく、オンラインに限定されたコミュニケーションになる。

そのため、「ただ相手と同じ時間と経験を共有したい」というような居心地の良い非言語コミュニケ―ションを相手に期待しても、それは無理なのである。

オンラインでは言葉を用いたコミュニケーションが不可欠で、しかもその言葉には自分と相手に認識のズレが生じることを常に頭に入れておかなければならない。

それはこのブログでも一貫して主張してきたことである。

ただ、ここで疑問が生まれる。

その理屈はあくまでも「ほぼ確実に相手と会うことはない」と分かった上で行うコミュニケーションであるが、出会い系やマッチングアプリのような、今後会うことを前提にしたオンライン上のやり取りでも同じことが言えるのだろうか?

今日は私にメールを送ってくれた読者とのやり取りを基にしてその話をしたい。

・インターネット空間に生まれた不思議な関係

今回、メールを送ってくれた人のプロフィールはこちら

・名前:シマダ(仮名)

・性別:男性

・年齢:32

・職業:機械の設計関係

・住まい:関西地区の都市部

上の表には書いていないが、彼は大学を卒業後に正社員として就職し、もうすぐ勤続10年を迎えようとしている。

これを見た限りでは、彼は模範的な社会人のように見えて、正社員として専門的な仕事をしていて、給料もそれなりに貰っていそうな感じがする。

はっきり言って、私が想定している読者とは全く異なる層の人物であり、このブログを訪れる理由などなさそうなのだが、彼がこのブログに行き着いた理由、そして、今回メールを送ってくれた理由は何なのだろうか?

シマダ:

これは家族や同僚に話していないことですが、実は結婚相手を探したいと思っていて、マッチングアプリを利用しています。

だけど、なかなか良い関係を築くことができません。

「この人とは話が合うかな」と思って、LINEの交換を始めたんですけど、私はコミュニケーションが苦手なので、すぐに話すネタが切れてしまい会話を続けることができませんでした。

「どうして自分はネット上でのコミュニケーションが上手くいかないのか」と悩んでいた時にこの記事を拝見して大変納得いたしました。

それ以来、このブログを読ませていただいています。

私は早川さんが指摘されている典型的なネットでコミュニケーションが取れないタイプの人間です。

そんな自分を変えたいと強く思っています。

そのため、オンラインの関係でも外国人といくつものやり取りをされてきた 早川んさんにネットで知り合った人と友好的な関係を築くためのアドバイスをいただきたくて連絡をさせていただきました。

それは大変嬉しい申し出なのだが、彼はこんな記事を書いた人間に結婚相手を見つけるための相談をすることに抵抗はないのだろうか?

確認したところ、彼もそのことは承知の上らしい。

インターネットの世界って不思議ですね…

私のように非正規で独身で恋人もいない人間が、なぜか真っ当な社会生活を送っている人から恋人作りのアドバイスを求められるなんて…

リアルでは絶対に有り得ないことである。

・最初の一歩のハードルが高すぎる

シマダは結婚相手を探していると言ったが、そもそも、彼が婚活サイトではなく、マッチングアプリで結婚相手を探している理由とは何なのだろうか?

彼は相手に対して年齢、職業といった条件ではなく、フィーリングが一致するか否かを重視しているため、最初は友達関係から始めたいと思っている。

そのため、「年収が~」とか「持ち家が~」というような条件面ばかり気にしている人が利用している(ようなイメージのある)婚活サイトは利用したくないらしい。

そのような理由から、あえてマッチングアプリで相手を探しているのだが、上手くいかない。

とはいっても、私はこれまで出会い系も、マッチングアプリも使ったことがないため、「ネット上のコミュニケーションが上手くいかない」と悩んでいると聞いても、それがどうもピンと来ない。

彼はどんな所に躓いているのだろうか?

シマダ:

最初の関門はプロフィール作りです。

自分の年齢、職業、年収、生活圏といった数字や記号で表記する項目は簡単に埋めることができます。

しかし、最後に自由にメッセージを書き込む欄があり、そこで自分をアピールしたり、どんな相手を求めているのかを書かないといけないのですが、その言葉が上手く書けません。

私は「あなたはどんな性格ですか?」、「どんな相手と付き合いたいですか?」と聞かれた時に、自分の思っていることを言葉で表現することができないんです。

そして、そのアプリは条件よりも嗜好が一致する人同士を結び付けることに重きを置いているようで、趣味や自分が興味のあるものの設定が重要なんですけど、私には趣味と呼べるものが全く無いんです。

私はこんな人間なので、運よくLINEの交換をする所まで進んでも、そこでどんな話をしていいのか分からずに、仲良くなれないまま、すぐに関係が解消してしまいます。

・過去の恋人と心地良い生活

なるほど。

それは大変そうである。

確かにシマダは、私がいつもこのブログで主張している「インターネットでは不可欠な言葉によるコミュニケーション能力」が欠如しているように見える。

さて、本題(?)に入る前にいくつか確認したいことがある。

彼はこれまでどんな恋愛をしてきたのだろうか?

そして、「自分がどんな人が好みなのかが分からない」と言ったが、発想を変えてみて、「どんなことをしている時が居心地良い」と感じるのだろうか?

彼は「趣味はない」と言ったが、日常生活の中で心地良さを感じる時くらいはあるはずだ。

だから、その心地良さを共有できる相手を探せばいいのではないか?

その2つを彼に聞いてみた。

シマダ:

交際経験は高校生の時に一度あるだけです。

相手は高校の同級生で、彼女とは小学校の時から一緒の学校に通っていました。

当時の私は田舎に住んでいたので、やっていたことは一緒に散歩をしたり買い物をしたくらいです。

それでも、その時はとても楽しかったです。

彼女とデートをしていた時だけでなく、そうした田舎の生活そのものが心地良いと思っていました。

早川さんが以前、同僚の方と食事中に地元で友達と遊んだ話をされた時に、「僕たち田舎者はどこへ行こうとか何をしようというのではなく、友達とただ一緒にいるだけで楽しい」ということを書かれていましたが、それを読んで「今までなかなか言葉にできなかった気持ちはこれだ!!」と気づきました。

最近楽しかったこともそれと関係しています。

年末年始に実家に帰った時に地元の友達と久しぶりに会って、食事をしながら昔話をしたことです。

今は仕事のために都心で生活しているけど、都会で遊ぶよりも、気心が知れた相手と一緒にいる何気ない時間の方が幸せを感じます。

早川:

「趣味はない」と言っても、お友達と一緒に出掛けることは楽しいのですか?

シマダ:

はい。友達と一緒なら飲みだろうが、アウトドアだろうが行けますけど、それを自分一人でやろうとは思いません。

そのため、近くに友達がいない現在は何もせずに一人で休日を過ごすことが多いです。

早川:

先ほど「何をすることが楽しいというわけでなく、仲の良い人と一緒にいること自体が楽しい」と言っておられましたが、それはシマダさんが子どもの頃からそんな感じだったのですか?

説明が難しいけど、たとえば、子どもの時は「小学生の時は少年野球よりも草野球の方が、水泳教室よりも川で泳ぐ方が楽しかった」とか?

シマダ:

野球や水泳はあまりやっていなかったけど、仰りたいことはよく分かります。

スポーツをすることが第一の目的なのではなく、友達と一緒に何かをすることが楽しいのであってスポーツはそのための手段に過ぎないということですよね?

早川:

そうです。スポーツをするにしても「仲のいい友達と一緒にすることが楽しい」のであって、同じ教室やクラブチームに入ったら、目的と手段が変わるというか、関係性がそれまでの友達から戦友やビジネスパートナーに変わってしまいそうで気持ちが悪くなる。

シマダさんが高校生の時、彼女と付き合っていたのも、告白して付き合い始めるのではなく、ずっと一緒に居て「気づいたら付き合っていた」という感じだったのですか?

シマダ:

はい。その通りです。お互い一緒にいる時間が心地良くて気づいたら、恋愛関係になっていました。もしも、改まって「僕と付き合ってください!!」なんて告白したら、たぶん彼女も「そういうのは重いから嫌だ」と断っていたかもしれません。

地方出身者同士の田舎談義に話が流れていったが、ここで彼の概要を改めて整理してみよう。

・言葉によるコミュニケーションが苦手。

・オンラインコミュニケーションスキルを改善したい。

・趣味と呼べるものがない。

・目的などなく、ただ友達と一緒に過ごす時間に幸福を感じる。

彼が私に連絡した理由が分かった気がする。

次回へ続く

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