
先月、ある記事のアクセス数が急増した。
その記事は1年以上前に投稿したものであり、特に季節ネタという感じでもなかった。
それがこちらの記事である。
4月に新生活が始まったことを機に、恋人探しをしたいと思う人が情報収集でもしていたのだろうか?
そちらの記事は、文中に直接明記しなかったものの、以前から付き合いがあった韓国人の友人がマッチングアプリで経験した災難についての義憤に駆られて書いたものだった。
今回の内容は、その記事の読者の方から頂いた感想からヒントを得たものになる。
・ネット上での規制が進んでいるが…

かつてのインターネット空間といえば、現在とは比較にならないほど無法地帯だった。
匿名掲示板や個人サイト、チャットルームなどでは、誹謗中傷やデマ、個人情報の晒し行為が日常的に行われていた。
だが、どんなに悪質な書き込みでも、多くの場合は
「ネットなんてそんなもの」
「所詮はトイレの落書きと同じ」
と片付けられていた。
もちろん、当時も名誉毀損や脅迫などの法律自体は存在していたが、実際に摘発されたり、発信者が特定されたりするケースは多くなかった。
そのため、「匿名だから何を書いても大丈夫」という空気が漂っており、被害者は泣き寝入りを強いられていたのである。
しかし、ここ20年ほどで状況は大きく変わった。
現在では、SNSで悪質な誹謗中傷を行えば、発信者情報開示請求が行われることも珍しくない。
犯罪予告を書き込めば、警察が動く。
企業へのデマ投稿も、営業妨害として問題視される。
つまり、社会全体として、
「現実世界で許されないことは、ネット上でも許されない」
という方向へ明確に進んでいるのである。
実際、YouTubeやXなどでは、以前なら放置されていたような投稿でも、現在は削除やアカウント停止の対象になることが増えた。
かつては無責任なネット社会の権化のようにみなされていた2ちゃんねる(5ちゃんねる)においても、その前提は同じである。
AI監視や通報制度も強化され、かつての「完全匿名の無責任空間」は徐々に縮小している。
そんな時代の流れの中でも、かつてのような匿名性を隠れ蓑にした不誠実で無責任な言動が横行しており、未だに「ここだけは20年前のネット文化がそのまま残っているのではないか」と感じる場所がある。
何を隠そう、それがマッチングアプリです。
・無責任な言動が横行する理由

しかも、そこは昔ながらの「怪しい出会い系サイト」とは限らない。
それどころか、年齢確認や本人確認、24時間監視、通報機能などを導入して、
「ウチは昔の危険な出会い系とは違います!!」
「健全な恋愛・婚活サービスです!!」
とアダルト色丸出しのサイトとは違うことを強調するクリーンなイメージを強く打ち出していることも少なくない。
実際、サクラや露骨な詐欺業者については、以前よりかなり排除されているのだろう。
その一方で、利用者の無責任な言動については、驚くほど「昔のネット文化」のままなのである。
学校や職場、地域社会での出会いは、人間関係に継続性がある。
無責任な態度を取れば、周囲からの評判に影響し、人間関係そのものが悪化する。
しかし、マッチングアプリでは、
・互いの知人がいない
・匿名性が高い
・関係が流動的
・アカウントを消せば終わり
・二度と会わなくても困らない
という環境が整っている。
つまり、「社会的制裁」が極めて弱いのである。
さらに、プロフィール一覧から相手を選別する仕組みも、人間関係を消費的にしやすい。
顔写真、年齢、年収、身長、職業などが並ぶ環境では、相手を「感情のある一人の人間」というより、「選択肢の一つ」として見やすくなる。
その結果、
「合わないから切る!!」
「もっと条件の良い相手へ行く!!」
「面倒だからアカウントを消して辞める!!」
という行動への心理的ハードルが極めて低くなる。
これは、かつて匿名掲示板で見られた「画面の向こうに生身の人間がいる感覚の希薄さ故に、相手を人間扱いしなくてもいい」感覚と非常に似ている。
もちろん、現実の恋愛でも不誠実な人は存在する。
しかし、少なくとも学校や職場では、一定の社会性や責任感が働く。
一方でマッチングアプリは、「実際に会うこと」を前提にしたサービスでありながら、未だに「匿名ネット空間」の文化を色濃く残している。
・「個人の不誠実さについては介入しない」は危険

過去にマッチングアプリを話題にした記事では、今回メールを頂いた方以外からも、実体験を元にした感想(というかほとんど被害報告)を頂いた。
彼らの話を聞く限り、投資詐欺や風俗勧誘のような、いかにも「出会い系の闇」というような犯罪の被害報告は一件もなかった。
その点においては、運営の監視や対策が機能しているのだろう。
彼らが胸を痛めたのは、そうしたあからさまな犯罪ではなく、現実世界では考えられないような相手の言動である。
たとえば、顔写真交換を求められ、送った瞬間に「そんな顔は無理です」と言われて即ブロックされた話。
食事の約束をして店を予約したのに、当日突然連絡が途絶え、相手はそのまま何事もなかったかのようにアプリへ戻っていたという話。
さらに、その件について抗議したら、逆ギレ被害者ヅラで「誹謗中傷された」と運営へ通報され、逆にバックレ被害者の方が警告を受けたというケースまである。
もちろん、恋愛や人間関係において、「相手を好きになれない」という感情自体は自由である。
しかし、問題はそこではない。
・突然の音信不通
・会う約束後のドタキャン
・容姿に対する暴言
・一方的なブロック
・人格を軽視した扱い
など、「犯罪ではないが、極めて不誠実な行為」で、そのようなことは現実世界で許されるのだろうか?
私が不思議に感じるのは、当事者の言動だけでなく、こうした行為に対して、
「マッチングアプリなんてそんなもの!!」
「期待する方が悪い!!」
「ネットの出会いなんだから仕方ない!!」
という、まるで初期の匿名ネット文化のような価値観が、未だに非常に強く残っていることである。
考えてみれば、これはかなり奇妙な話だ。
現在では、YouTubeやXのように、ネット上だけで完結するやり取りですら、「現実社会と同じ責任」が求められるようになっている。
にもかかわらず、なぜ実際に会うことを前提にしたマッチングアプリでは「文化」として許容されているのか?
その行為について、
「悪質ユーザーに一定の責任を負わせよう」
「サイトや警察と連携して被害者へ補償しよう」
という社会的議論は、ほとんど聞かれない。
もちろん、法的に考えれば難しい部分もある。
例えば、恋愛感情そのものを規制することはできない。
「会いたくなくなった」
「怖くなった」
「気持ちが冷めた」
という感情まで処罰対象にすることは難しい。
運営会社が、詐欺や業者行為は排除しても、「人間的に不誠実な態度」を放置しているのはそれが原因なのだろう。
しかし、「個人の不誠実さについては介入しない」という発想は極めて危険である。
今でもそうかもしれないが、かつて、ネットに横行していた犯罪予告、個人情報やデマの拡散なども、大半は本気で「あいつを抹殺しよう」という強い思いからではなく、
「どうせ証拠が残らず自分が書いたことを特定されないだろうから」
「誰もネットの書き込みなんて本気にしないだろう」
という軽い気持ちや冗談で書いていたのではないか?
それらは「いけないこと」として規制されているこのご時世に、「マッチングアプリだからOK」という理屈にはならないことは明らかであろう。
・マッチングアプリ被害者救済法の制定を

というわけで、マッチングアプリにおいても、被害者の救済と加害者の処罰を目的とした「インターネット異性紹介事業被害者救済法」(またの名を:「マッチングアプリ被害者救済法」)とでもいうべき法律が必要であろう。
目的は、金銭的な損失が発生した場合は運営に保障の責任を持たせることと、加害者には匿名性による逃げ得を許さないことである。
現在、利用開始にあたって法律で求められていることは18歳以上であることを証明する年齢確認だけだが、本名、住所、電話番号などの本人確認を厳格化する。
そして、サイトで知り合った相手と会うために店を予約したものの、相手が突然音信不通になる等の悪質で無責任な言動により金銭的損失が発生した場合、先ずは警察に連絡して被害届を出す。
その後は数日の待期期間を設けるが、そこで加害者からの連絡がなかったり、被害者が説明に納得しないなどの正式な被害が確認されたら、交通費、キャンセル料、加えて有給休暇を使用した場合は1日分の賃金などの全被害額をサイト運営者が立て替える。
運営が立て替えた費用は後日、加害者に請求される。
その後で加害者は永久に利用停止として追放処分にするか、一定期間の利用停止というペナルティで済ませるかはサイトの裁量に任せる。
もちろん、本当は気が向かないだけだが、責任追及を避けるために、当日は病欠や身内の不幸などやむを得ない理由でキャンセルして、その後はフェードアウトという手段を考える小汚い人間もいるだろうから、時効は15年とする。
こうすることで、「あの時は説明に納得したけど、後の対応を見たら、明らかにウソの理由で騙されていた」という泣き寝入りを防ぐことが出来る。
15年という期限だが、不同意性交罪のバーターにしている。
この法律は「後出しジャンケンで逆恨みによる虚偽申告を生む!」と批判されることが多いものの、取りあえず、現状はそうなっているので、これと同じであれば文句はないだろう。
その間に運営サイトが倒産していたら、さすがにそれ以上は追及できないが…(笑)
サイトの運営者にとっては余計な手間が増えるかもしれないが、金融機関の口座を利用した振り込め詐欺が発生した時は、金融機関が犯罪利用口座を凍結して、口座の残金を被害者に按分して支払う「振り込め詐欺救済法」が平成20年(2008年)から施行されている。
振り込め詐欺救済法とは | 金融犯罪の手口 | 一般社団法人 全国銀行協会
それと同じようなことをやるだけである。
また、金銭的な損失は発生しなくても、「一方的に暴言を吐いてブロックする」、「気に入らないことがあれば突然音信不通になる」などの逃げ得を防ぐために、一定の審査に基づいて「バックレ」と判断されたら、加害者の情報がサイトを通じて被害者に開示されるなどの情報公開も必要だろう。
これもすでにネット上での誹謗中傷やプライバシー侵害に対する投稿者(発信者)の特定、住所・氏名などの個人情報開示と同じことである。
中には「そんなことをしたら別れる時にストーカー被害に遭う」と心配するかもしれないが、甚だ見当違いである。
そもそも、無条件に開示されるわけではなく、あくまでもバックレなどの不誠実な対応をした場合のみで、別れたい時は普通に別れを切り出せばいい。
会社や学校で知り合った相手とプライベートで付き合う時はお互いの本名、連絡先、場合によっては住所も、すでに知られているが、それだけを理由に「そんな相手とは関係が拗れた時に襲われるかもしれないから怖くて付き合えない…」と言っているのと同じである。
あくまでも「匿名性による無責任を排して、それらと同じ条件にすべき」と言っているのである。
それが嫌だというのは、「自分は匿名に隠れて、素性が分かれば出来ないことをやりたい!!」と言っているに等しい。
そんな人は被害者ではなく加害者になる可能性の方がよっぽど高いです。
もしくは、やりたい時にだけ会って、「要らない」と思ったら後腐れなく捨てられる関係を望んでいるとか。
いずれにせよ、これだけネット世界での責任が厳しく問われる時代において、マッチングアプリの世界だけは、これまで通り、匿名を隠れ蓑にしたり、都合が悪くなるとアカウントを削除して逃亡などの無責任な振る舞いを野放しにしても構わないという理屈は通らないと言えるだろう。









