正社員はアルバイトを社員と同じようにコキ使っても幸せになれない

前回の記事では、「正社員が自分の保身のためにアルバイトを酷使しても誰も同情しない」ということを書いたのだが、改めて読んでみると、気になる点があったため、今日はその内容について少し補足させてもらいたい。

前回の記事を読んだ感想としては、まるで私が

「たとえ自分の利益に反してでも、不正義には加担せずに、勇気を持って命令を拒むべきだ!!」

と熱く訴えているように見える。

しかし、今日の記事で私が最も言いたいことは

「そもそも、アルバイトを社員並みに働かせることは、長期的に見れば自分たちのクビを絞めることになるため、正社員にとってのメリットはない」

ということである。

先ず、アルバイトを

・勤務シフトを一方的に決めて、学業や急な家庭の都合でも例外は認めない。

・仕事が終わらなければ定時でも帰さない。

・指示を出さなくても主体性を持って働くように仕向ける。

というように社員と同じように鍛えて、人件費の無駄を徹底的に省いた少数精鋭部隊を形成する。(もちろん、待遇はパート・アルバイトのままなので時給は最低賃金レベルである)

すると、安い人件費で職場を回すことができるため、短期的には利益が上がって、マネージャーである正社員の評価も上がるかもしれない。

そこで彼らは

「やっぱり会社は利益を出してナンボ!!」

「学生だろうと主婦だろうとお金をもらう以上はプロなんだから、『バイトだから…』という配慮は無用であり、安い賃金でも徹底的に厳しくすべきだ!!」

と思うかもしれない。

しかし、彼らは「バイトが正社員並みに働いたら、(相対的に)高給取りである自分たちの職が奪われる」ということに気づかないのだろうか?

もしかして

「自分はただの一社員ではなく、選ばれた人間」だとでも思っているのか?

・自分の仕事を奪う存在を必死に育てる不思議

これは今まで何度も紹介した「モーレツパート班長」のいた職場で働いていた時に先輩のCさんから聞いた話である。

彼女がその店で働き出したのは今から20年くらい前のことだった。

当時の部門長は正社員であり、その人とは別に若手社員が「見習い兼班長補佐」という形で働いており、正社員2人で職場をまとめていた。

しかし、その会社は人件費削減のため、次第に部門長以外の正社員は減らす方針を打ち出し、その職場も、正社員は管理職のみとなり、彼女の上司は人員の減少をカバーするために主婦パートを徹底的に戦力化しようとした。

そこで見出されたのが、後の「モーレツパート班長」であり、部門長は後の班長を徹底的に教育した。

彼女はその期待に応えて、パートの立場でありながら、その職場の大部分を任されるまでになった。

そして、部門長の転出に伴い、彼女はパートのまま「班長」に抜擢された。

その後、他所の店舗でも彼女のようなパート班長が段々と増えて、正社員にのみ任せていた重大な仕事をパートにもチャレンジさせるという会社の目的は徐々に達成されていった。

・・・って、なんだかプロジェクトXのような書き方になってきたが、現実は残酷である。

パートを鍛えて、彼女のようなパート班長が増えた結果、正社員削減の動きがさらに加速して、食中毒警戒のために社員が常勤しなければならない鮮魚部門を除いて、ほとんどの班長クラスはパート従業員となり、社員は複数の部門、店舗の管理職を兼任することが当たり前となった。

そして、私が始末書を書かせることになってしまったB氏のように50㎞近く離れた店の責任まで負わされる社員まで出てきた。

B氏に対しては今でも悪いことをしたと思っているが、彼は仕事があるだけ恵まれているのかもしれない。

なかには、リストラの対象となり、いじめられたり、お仕置き部屋に閉じ込められて、人知れずひっそりと職場を去ることになった元社員もいたかもしれない。

「パート労働者を正社員並みに働かせたらどうなるのか?」を教えてくれる事例である。

・「仕事ができる人=自分に対して従順な人」という落とし穴

人を使う立場の人はついつい勘違いしてしまうことだが、

仕事ができる人=自分に対して従順な人

ではない。

これを勘違いしていると利用しているつもりの相手から、足元をすくわれてしまうことになる。

危険な発言であることは承知しているが、仕事ができる(もしくは「自分はできる」と思っている)パート労働者にとっては「正社員追放」という運動は実に楽しいことだと思う。

小売業が代表的であるが、正社員は基本的に「就職したら、たまたまその店に配属になった」だけで、その街には縁もゆかりもないサラリーマンであり、数年経てば別の場所に異動してしまう。

それに対して、(とりわけ主婦の)パート労働者は何十年も働きながら、その地域に根付いて暮らし、地元の消費者と顔見知りであることが多い。

極端な話、正社員よりもその店のことを知っていることが少なくない。

そんな人たちにとっては、立場も収入もはるかに上の(なおかつ、会社の都合で他所からやって来た、ある意味「よそ者」である)社員を打ち負かして、自分たちの方が優秀だと認めさせることは実に爽快だと思う。

そんな考えを持っている人たちに主体性と責任感を持たせて働かせたら、私が働いていた会社のように正社員を駆逐して、追われた正社員はパートとの差異を見出すために、パートにはできないような複数店舗を掛け持ちで管理するというような激務に追い込まれることになる。

バイトを社員並みに働かせると、バイトが疲弊するだけでなく、正社員も追いつめる。

そんなことして得になるのは目先の利益しか頭にない役員と消費者だけである。

バイトは楽な仕事だけさせておく方が、結果的に正社員の立場も安定させることになるのだと思う。

・結論

・パートを徹底的に使って得をする人は「自分はこの会社で出世して、将来は役員になる!!」というような野望に満ちている人だけである。

・「正社員として安定しながらひっそりと暮らすだけでいい」と思っている人は自分の保身のためにもアルバイトを社員並みに働かせることは止めた方がいい。

・おまけ

テーマから少し離れるため、本文では書かなかったが、私が働いていた会社について少しだけ補足させていただきたい。

これまで10年以上の歳月をかけて、正社員削減プロジェクト(?)を進めてきた会社であるが、私が働いていた時はすでに人手不足に悩まされており、今働いている従業員に逃げられないためなのか、パートやアルバイトを積極的に契約社員へ登用しようとしていた。

・・・のだが、契約社員登用の条件とは

:班長(もしくは部門長)、店長、エリア長の3人の推薦を得る

:勤続3年以上

:広域転勤に対応できる

:自家用車所有

参考:給料は月1X万(手取りなのか、額面なのかは不明)

である。

はともかく、他の条件を見ると「あんた、本当に人を雇う気があるのか?」と疑ってしまう。

一度、賃金の安いパートを社員並みにコキ使うことに成功した経験の悪影響はこんな所にも出ているのかもしれない。