ワーキングホリデーで農業をやって一儲けしようと企んでいる人への警告

・屋外で仕事をされている方へ

東京は8月に入った途端、急に熱くなった。

夏とは思えなかった7月のしみったれた天気がウソのようである。

屋外で仕事をされている方は熱中症に気をつけてください。

熱中症は本人が気づかないうちに症状が悪化することが多いので機械の操作をしている人は特に注意が必要である。

よく、屋外で作業をする建設、警備、工場作業のような肉体労働のことを「誰でもできる単純作業」と言って蔑む人間もいるが、これはとんでもない思い違いだと思う。

「生産性が~、スキルが~」とかではなく、炎天下の中で、一日に何時間も立ち続けることができること自体が偉大なことであり、とてもではないが私には務まらない。

同じように、重労働だが「自分でも簡単にできそう」というイメージを持たれる仕事として「農業」がある。

想像してほしい。

真夏の太陽が照り付ける中で、長袖、長ズボンを着用し、汗と泥にまみれて、虫を警戒しながら、立ったり座ったりの繰り返し…

考えただけで汗の臭いが頭によぎる。

こんな重労働のどこが「誰でもできる簡単な仕事」なのだろうか?

・日本の職場慣行にうんざりして、海外の農作業で一儲けしたい

「簡単な仕事」というイメージだけではない。

少なくない人が「農業」という仕事に対して何かしらの幻想を抱いていると思う。

これは私の偏見だが、特にオフィスワークに就いている人は、上司や取引先のご機嫌取りや、正しいお辞儀の角度のような日本企業のくだらないビジネス慣行にうんざりして、「農業は人に気を使う必要がない自由な仕事」、「自分もこの仕事を辞めて、農業で自由に働きたい」と思っている人が少なくない気がする。

しかし、私は、一日や二日の農業体験ならともかく、これまで冷暖房完備の職場で働いていた人が、仕事を辞めて未経験の農業の仕事に就くことはリスクが高いと思う。

「そんなリスキーなことをする人がいるのか?」

そう思うかもしれないが、実は案外いるのではある。

「農業の職に就く」と言っても、これは決して「自分で土地や機材を買って、一から畑を耕して~」というようなことだけではない。

私が気にかけているのは「ワーキングホリデーで海外へ行って、ファーム(農業)の仕事をしたい」と考えている人たちである。

彼らの多くは先ほど述べた通り、日本の職場慣行にうんざりしており「オーストラリアのような国では、人手が足りなくなる季節に高時給の求人が増えるので、その仕事で一儲けしよう」と思って、海外の農業で出稼ぎ労働をしようと考えているようである。

「都会の雑音から逃れたい」

「自然を満喫したい」

「そして、夜は宿舎で自分と同じように外国からやってきた仲間といろいろなことを語り合いたい」

彼らは海外で農業をすることに対してこのような憧れを持っているのだろう。

・思ったよりもキツイ仕事なので耐えられない

以前の記事で紹介した彼がこんな経験を語ってくれた。

ワーキングホリデーでオーストラリアに行った時はセカンドホリデービザのことも考えてファーム(農業)の仕事に就いた。

そこには「時給が高い」とか「自然を満喫したい」という理由でやって来た日本人もたくさんいた。

でも、初日にいた人の内の半分近くは「立ち仕事がキツイ」とか「屋外の仕事がキツイ」とか言って一週間も持たずに辞めてしまった。

中には「自分の汗の臭いで頭がおかしくなりそうだから」と言って辞めた人もいた。

自分も「暑い中、屋外で仕事をするのはキツイ」と思ったし、結局、腰を悪くしたので1ヶ月で辞めることにした。

自分の場合はある程度の貯金を持っていたから、仕事を辞めても生活に困ることはなかったけど、「出稼ぎ目的で来たけれども、仕事が続かなかった人はどうなったんだろう?」と今でも疑問に思う。

ちなみに、彼はかつて野球をやっていたから体力には自信があるつもりだった。

しかし、それはあくまでも高校生の時の話なので、彼が農業で働き始めるまでの5年以上の間は主に内勤の座り仕事や、立ち仕事だったアルバイトの時も空調設備のある室内で働いていた。

そのため、彼の体力は以前と比べてかなり低下していたと思われる。

その自覚がないままに、未経験で高時給の農作業の仕事に就いたら、それまでの表に出ていなかった体力の低下が露(あらわ)になったのだろう。

また、彼は出稼ぎ目的ではなかったものの、地方の生活に愛着を持っていたため、「農業って会社員と違って、人の顔色を伺う必要がなく、自分のペースでのんびりと行える素敵な仕事なのだろうなあ」という漠然とした憧れを持っていたが、その甘い幻想は一気に吹き飛んだ。

もし、出稼ぎ目的で数ヶ月分の滞在費しか持たずに「お金は現地で稼げばいいや」という甘い考えを持っている人なら、農作業についていけずに、結局、数ヶ月で帰国するという最悪なシナリオも考えられる。

というわけで、一度も屋外で仕事をしたことがないにもかかわらず、漠然と「海外で農業をやって、大自然に触れながら一儲けしよう」という考えで、ワーキングホリデーに行こうと思っている人は、日雇派遣でもいいから、一度は冷暖房なしの環境で働くことを経験して「本当に海外でこんな作業に耐えられるのか?」をよく考えてほしい。

これに耐えることができないと思うのなら、「農業で一儲けしよう!!」などと思わずに、一年間、仕事をせずに暮らすことができるだけの資金を貯めてから出発することをお勧めする。

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