
半年ほど前にこんな記事を書いた。
あまりにも長文になりそうだったため省略したが、実はこの記事を書いていると、どうしても紹介したい人物がいた。
だいぶ遅くなってしまったが、今日はその話をさせてもらいたい。
・最低でもこれくらいのことはやりましょう

ここで先の記事を簡単に振り返ることにしよう。
移民受け入れについてのニュースを見ていた私は、あるコメントが目に留まった。
「移民の受け入れを議論しなければならない原因は少子高齢化にあり、移民政策に反対するのであれば、まずは自分が子ども二人を生み育てることが最低条件である」のだという。
ちなみに、コメ主は「自分はその義務を果たしている」と宣言している。
この主張が、「移民受け入れに反対しているのは、義務を果たさず権利ばかり主張する連中ばかりなのだ」という反対派への哀れみからなのか、それとも「自分はそれだけ子どもを育てるのが大変な社会で頑張っているだから、もっと評価してよ!!」という自己顕示欲から生まれたのかは分からない。
しかし、仮に子どもを二人育てる人が増えたとしても、移民受け入れの議論が消えるわけではない。
なぜなら、今起きている労働者不足は、単純に労働者の頭数が足りないという問題ではないからである。
外国人労働者の受け入れは、東京への人口集中による地方の過疎化や、事務職が過多、介護、建設、運送、農業などは人手不足というミスマッチによって引き起こされる面が大きい。
仮に奇跡が起きて、少子化問題が解消したとしても、それだけで、彼らが成人する数十年後に「労働者不足は解消されたから、外国人労働者なんて要らない!!」という時代が訪れるはずがない。
というわけで、「自分は子どもを二人育てているから、『移民反対!』と主張できる権利がある」などというのは甚だしい勘違いなのである。
「もっと自分のような人間が増えれば、移民など不要」と言えるには、最低でもこれくらいのことはしないといけない。
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人手不足の業界で働く
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夜勤や土日勤務も引き受ける
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人口減少地域に住む
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地域コミュニティに参加する(高齢化が進む地方では、産業だけでなく、地域コミュニティそのものの維持が課題になっているため)
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親と同居して介護や生活支援を行う(社会保障費の負担を少しでも軽減するため)
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地域密着型の店を利用する(実際に就労者が多いわけではないが、移民反対論者の中には、「外国人が働く場所=コンビニか飲食店」と考えているため)
身を張ってここまでやっていたら、私も「自分は移民受け入れに反対する権利がある!!」と真顔で主張されても反対しない。
・思いもよらぬ所に該当者がいた!?

すべてを経験したわけではないので、想像も含まれるが、上記の6点は決して楽なことではない。
高いとは言えない給与で、なかなか人が定着しない職場で、他の人が家族団らんの時を過ごしている夜間や土日に仕事をしなければならない。
娯楽が充実しているとは言い難い田舎に住み、休日も親族の世話や地域の行事に参加せねばならず、不便で品揃えも悪い店で買い物をすることになる。
ネット上で声高に「移民反対!!」と叫ぶだけの人間は、わずか数日でこんな生活には根を上げるだろう。
そんなことを思っていたのだが、よくよく思い返すと、かつてこのような生活を送っていた知り合いがいたのである。
その人物はこのブログに何度も登場しており、常連の読者の方にはお馴染みである。
何を隠そう、その人物とは…
元同僚のタケダ(仮名)である(笑)
彼と共に働いたのは、もう15年近く前で、当時の私は地元で工場のバイトをしていた。
彼はそこへ中途採用の正社員として入社して来た、当時50代後半の人物だった。
年齢差に加え、当初は正社員とバイトという関係だったため、あまり仕事でギスギスすることもなく、「親しい話が出来るおじさん」くらいの間柄だった。
ところが、半年後、彼の雇用形態がパートとなった頃から、徐々に関係が変化し始めた。
彼がパートとなったことで、立場も業務内容も同じになった状況で、少しでも優位に立ちたいためか、彼は事あるごとにマウントを取ってくることになった。
中でも多かったのが、
「俺は学歴も社会的な地位もないけど、娘を二人も育てたから、社会的な義務を果たした」
「それに比べてお前は結婚なんか出来るわけがないフリーターだから、俺の方が偉い」
というものである。
ちなみに、「娘を二人育てた」と豪語する彼であるが、結婚後もしばらくは定職に就いておらず、看護師として働く妻が家計を支えていた期間も長く、娘二人の学費はすべて奨学金で賄い、卒業後は本人たち(後にその夫)に返済させ、親である自分は一円も負担していない。
男性家長が責任を持って妻と子どもを養うことが規範とする日本型雇用信者がそれを聞いたら、発狂して、
「お前は家長としての責任を全然果たしていないだろう!!」
「にもかかわらず、俺たちと同じみたいな顔をするな!!」
「そもそも、50代の男がパートなんかで働いて恥ずかしくないのか!?」
と一喝するに違いない。
普段は彼らに敵対心を持っている私も、この点については彼らに賛同する。
タケダとは退職後もやり取りを続け、私が東京へ出て来たことも知っているが、特にそれからは一貫して、「早く地元に戻って正社員になれ!!」と言い続けた。
そんな彼とは、この一件で完全に袂を分かち、もう5年以上連絡を取っていない。
・驚きの審査結果

今やすっかりコケ下ろす対象と成り果ててしまったタケダであるが、私が知る彼は、先ほど挙げた「『移民反対!!』と言える権利」に多く該当している。
1.人手不足の業界で働く
2.夜勤や土日勤務も引き受ける
3.人口減少地域に住む
この3点については、私と共に働いていた時の様子がまさにそうである。
私たちの職場は夜勤こそなかったものの、彼は在職時に掛け持ちで夜勤の警備の仕事に応募したことがあった。
結果こそ不採用だったが、働こうという意思はあるのだから、その点もクリアしていると言える。
4.地域コミュニティに参加する
こちらについては、パートとなりシフトの融通が効くようになってからは、清掃活動やゴミの分別処理などの自治体活動には参加するために休みを希望していたこともあるので、これも満たしている。
5.親と同居して介護や生活支援を行う
まず事実を述べるが、当時の彼は自身の親とも、妻の親とも同居はしていない。
しかし、社員時代に退職を希望した際は「私は親の介護のため、田舎へ帰りたいと思っております」と述べるくらいだから、「年寄りの面倒なんて御免被る」と逃げ回っているわけではなく、少なくとも表面上は向き合う気はあるようである。
6.地域密着型の店を利用する
彼は主にイオンやセブンイレブンなどの大手の店を利用していたので、これは明確に該当しない。
ただし、くだんの記事で述べた通り、そのような店で働く外国人労働者は決して多数派ではなく、現実的な影響というよりも、反対派への皮肉として、俎上に載せただけに過ぎない。
そのため、未達成だからといっても「けしからん!!」と批判する程のものではなく、あくまでも参考記録ということにする。
これでタケダは審査対象5項目のうち、4項目は達成、残り1項目も果たす気はある(その場限りの冗談の可能性も高いが)ということになる。
総合得点は4.5点。
100点満点だと、なんと90点。
最低でも80点は達成ということになる。
あれほど弄っていた人物が急に輝いて見えるようになった。
ちなみに、彼は子どもを2人育てた。
私はそのこと自体、移民受け入れの議論について全く関係ないと思っているが、そのことを錦の御旗や印籠のように崇めるものも少なくないので、おバカさん向けの宣伝材料としては大いに加点と見なせる。
・感動の表彰式

というわけで、当ブログでは、タケダのこれまでの多大なる功績を称えて、表彰させてもらいたい。
第一回 胸を張って「移民反対」と言えるで賞
タケダ殿
あなたは、人が離れていく地に住み続け、住民たちと協力して地域を守り、人がやりたがらない仕事に従事して、長年に渡り、人知れず社会を支えてきました。
あなたの気高き行動は、口では威勢のいいこと言いながら、社会的なコストの負担から逃げ回っている移民反対論者たちに爪の垢を飲ませるべき規範となっています。
その功績を高く評価し、あなたは胸を張って「みんなが自分のようになれば、移民なんて要らない!!」と宣言できる人物であることを証明いたします。
令和8年11月8日
はやかわブログ管理人
早川鉄男
彼は自分の人生を棚に上げて、事あるごとに私に対して、自分がいかに社会貢献してきたのかを語っていた。
私はそんな彼を心の底から軽蔑していた。
だが、今日から考えを改めてないといけない。
彼はある分野において、計り知れない功績を残していたのだ。
先ほど名前を出した日本型雇用信者の方々にぜひともお願いしたいことがある。
彼はこんな立派な人なのだから、自分の価値観だけで、あんまり彼のことを「負け組」、「底辺」、「甲斐性なし」、「男としての責任感がない」などと叱らんでやってください。
これからタケダには、当時の私のように実家住まいのフリーターにマウントを取るのではなく、移民反対グループに乗り込んで、自分の輝かしいキャリアを誇示して、高説を垂れていただきたい。
「諸君に問う。君たちは声高に『移民反対!!』と言えるよう人手不足の業界で仕事をしているのか!?」
「後継者不足の地方に住んで、人がやりたがらない仕事をやって、地域社会と共生していると胸を張って言えるのか!?」
「私はその義務を果たしている。さあ、君たちも私を見習ってやろうではないか!!」
そんな演説をしながら、哀れな迷える子羊たちを救い導いてほしい。
そここそが、彼が最も輝ける世界と言えるだろう。
なお、タケダが移民反対論者だったのかは不明である。










