すぐにバックレる新入社員たち

・毎年、入社式の季節になると思い出す人たち

今から数年前、4月に入社した新入社員が5日でバックレたことがあった。

数日後、バックレた理由を電話で説明してきた。

理由:わからないことを聞ける雰囲気ではなかったから。

なんじゃそりゃ!?

雰囲気も何も、最初は仕事ができなくて当たり前なのに何でそんなことで悩むのか?

「近頃の若い者は吹いたら飛ぶようにメンタルが弱いんだから・・・」と言いたいところだが、このような理由でバックレるのは若者だけではない。

5年以上前の話だが、当時50歳のおじさんが入社して3日でバックレたことがある。

それもただのバックレではなかった。

彼は両親と同居していたのだが、初めて無断欠勤した日に家へ連絡すると、その日は普通に仕事に出かけたという返事があった。

彼は翌日も無断欠勤をしていたので、その日も彼の自宅に電話をかけたが、彼は前日から家にも帰っていなかった。

ひょっとすると事故に会ったのかもしれない。

そんな心配をして警察に連絡することも検討していたが、数日後に彼から電話があった。

彼が出社できなくなった原因は先輩に仕事のやり方を聞いたら「昨日教えたのに、もう忘れたのか?」と嫌味を言われたり、「パートのおばさんに仕事のやり方を聞いたら、全員から無視された」というようなことだった。

出勤途中にそのことを思い出すと、職場へ向かえなくなって、そのまま車に乗って逃げ回っていたらしい。

取りあえず、彼の(主張する)加害者一覧に自分の名前が挙げられてなくて一安心したが、「いい年した大人が何でそんなことに傷つくのか・・・」と驚いた。

このように、入社したばかりの人がとんでもない理由でバックレることは年齢、性別を(おそらく国籍も)問わずに見られる普遍的な現象である。

・不安に満ちた状況では、頭も心も正常ではなくなる

そうは言うものの、彼らの気持ちも分かる。

人は不安に満ちた時、平常時では考えられないような思考に陥ることがある。

彼らのことを考えていると、以前見たテレビ番組を思い出す。

たしか2012年頃だったと思う。

「ザ・世界仰天ニュース」という番組でオウム真理教の信者を取り上げていた。

その中で、なぜ高学歴の若者がオウム真理教の信者になったのかが論点になっており、法政大学犯罪心理学研究室の越智啓太教授(肩書は放送当時のもの)が誰もが「洗脳」される可能性について説明していた。

下の画像はその時に使用されていた図である。

最初に左の「日本」と書かれている方を見てほしい。

中央に立っている赤丸で囲まれた青年があなたである。

そこに青丸で囲まれたお兄さんが「やあ、こんにちは。こっちに来るといいことがありますよ~」と声をかけてくるが、日本にいる時は周りの情報をしっかりと把握できているため、そんな怪しい誘いがあっても常識や批判力が正常に働き、騙されることはない。

一方で右の「外国」と書かれている方は、あなたは外国にいることになっている。あなたは周りの人たちの言葉が分からずに不安に満ちている。

そこに先ほどの怪しい男性が同じように現れて、日本語で「やあ、こんにちは。こっちに来るといいことがありますよ~」と声をかけたとする。(下の図)

そうなると、あなたはどうなるだろうか?

おそらく、相手が日本語を話せるというだけで無条件に自分の味方であると信じ込んで、日本にいる時には騙されるはずもない人に騙されるかもしれない。

このように、人は周りの状況が読めず、不安になると、常識では考えられないような行動を引き起こすことがある。

これは「洗脳」の手口についての解説だが、メンタルが弱くて、すぐに退職する新入社員も同じようなものではないだろうか。

だから、「入社したばかり仕事ができない」と頭では理解しているつもりだが、不安に満ち溢れると、些細なことに傷ついて、精神的に潰れてしまうのだと思う。

・「中高年はプライドが高くてすぐに辞めるから雇いたくない!!」という言葉が意味する傲慢さ

採用者を年齢でふるいにかけることは本来違法であるが、この社会では依然として、年齢で採用者を選別することが多い。

百歩譲って、年齢にこだわることは仕方がないとしても、なぜか若くて十分な職歴がない若者の方が経験豊富な中高年よりも好まれるという、他の先進国から見たら不可解な現象が起こっている。

そのような若い子大好き人間の代表的な常套句に

「若い子は素直で会社の言うことを何でも聞くけど、中高年はプライドが高くて扱いにくいから、人を雇う時は絶対に若い方がいい!!」

というものがある。

たしかに何も知らない新卒者などは上司から言われたことは何でも従うかもれない。(場合によっては違法行為であっても)

一方である程度働いた経験のある人は上司の言うことを無条件に受け入れることができない時もある。

面と向かって反対意見を述べるだけでなく、「それって本当に大丈夫なんですか?」と何度も確認してくることもある。

言葉で人を動かすことが得意ではない人はこのようなやり取りに煩わしさを感じてしまい、「黙って自分の言うことを聞いてほしい!!」と思うかもしれない。

しかし、新たに中高年を雇い入れる時の一番のリスクは「年下の上司から命令されると、へそを曲げてすぐにバックレるかもしれない」ことを警戒しなければならないことである。

実際に、仕事を始めたばかりでまだ慣れていない時に、年下の上司にやかましく言われたことが引き金となり、喧嘩同然に辞める人はいる。

「それ見たか!! だから中高年なんか雇うべきじゃないんだ!! 雇うのは若いのに限る!!」

と思う人もいるかもしれないが、ちょっと待ってほしい。

「中高年にこれを言ったら仕事を辞めるだろう」と分かっていながら、なぜそれを「若手には言っても大丈夫」と思えるのだろうか?

中高年が怒るような言葉は、20代の若手にも言うべきではないのではないか?

少なくとも彼らは自分の振る舞いを変えるのではなく、自分のやり方に適応できる人間が欲しいと思っているようである。

「中高年はプライドが高いから扱いづらく雇いたくない」という言葉を堂々と発している人間には「自分は人が嫌がる方法で仕事を教える人間です。だから、それに適応できる若手が欲しい」という恐ろしい本性が垣間見えている気がする。

次回へ続く